山藤里菜




言葉が無くても居られる場所に、立っている。


その霧は、どこから来たのか。足に力を込めれば、遠のいてしまう。指先を解けば、迷い込んでしまう。


ーーーそれを、お離しなさい。


静けさの中に、何者かが立っている。この気配を、知っている。


ーーー欲を、お離しなさい。霧は欲で晴れてしまうでしょう。


いえ、私には欲がありません。何ものも、望みません。何ものも、手放せることでしょう。


何者かは、無言で居る。


正しさは、一瞬で役目を終えてしまうのだ。


頭は締め付けられ、指先は痺れるように冷えていた。

ここに居る許しが、ほしかった。


何者かは、立っている。私はそれを意識した瞬間、人ではなくなる。


ーーーじきに、あなたは、ここに戻る。


どうか、お待ちください。


私はその気配を必死に追いかける。その狂気に、正しさが剥がれていく。


霧は晴れた。


この山には、霧が降る。


そっと冷えた風が、吹いていた。




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山藤里菜 @_to_v_

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