第1話 『異世界転移』と唱和するのじゃ

 そこには広い草原が広がり、爽やかな風が僕の頬を撫でる。


 足下には見たことがない草の群れと可愛い花々が、気持ちよさそうに風に漂う。


 青い空に白い雲が悠々と流れ、不気味に浮かぶ黒い月が異世界であることを物語っていた。


 異世界転移。ライトノベルで夢見ていた世界に僕は立っていた。




 高校2年生になった4月。


 クラス替えもあり見知らぬ顔が多い。


 1年の頃から馴染みの友達もできない僕は、運良くか悪くか出席番号順で決められた席順で教壇前、いわゆる特等席に座っていた。


 朝のホームルームの時間、扉を開けて入ってきた教師……ではなく灰色のローブを着た老人?


 クラスメイト達が途端にザワザワとざわめく。


 老人は教壇に立ち、こう言った。


「今、我の世界は黒い月の魔力で、多くの魔物達が人々を苦しめておる。各国の騎士団や傭兵、冒険者達も力を尽くしておるが、いかんせん聖邪の天秤は大きく邪に傾いておる。皆の力を我の世界に貸してはくれんか」


 マジ?


 如何にもって雰囲気の老人だが、ただの中二の頭がいかれた爺さんって可能性も高い。


 クラスがさらにざわめく。


「ふ、不法侵入者!」


「誰か先生呼んでこい!」


「いや、110番!」


「爺い!ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!」


「チートスキルは貰えるんですか?」


「ハーレム出来ますか?」


「ケモミミ必須です!」


 最後の質問をしたのはオタクグループの人達だ。


 僕もラノベは大好きだが、彼らは18禁ジャンルの話を余裕で語る、キモエロなオタクトリオと周りからも言われている。


「異世界転移者には特別なスキルが与えられる。

 勇者になる者、聖女になる者、賢者になる者もおるじゃろう。

 運悪く使えないスキルを取得する者もおる。

 しかし今なら空間収納袋(小)を全員にプレゼント!

 更に10連ガチャも付けちゃうぞい!」


 うわ~、うさんくせぇ~。


「我の世界に来てくれる者は、我と共に『異世界転移』と唱和するのじゃ。異世界転移!」


「「「異世界転移!」」」

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