第1話 『異世界転移』と唱和するのじゃ
そこには広い草原が広がり、爽やかな風が僕の頬を撫でる。
足下には見たことがない草の群れと可愛い花々が、気持ちよさそうに風に漂う。
青い空に白い雲が悠々と流れ、不気味に浮かぶ黒い月が異世界であることを物語っていた。
異世界転移。ライトノベルで夢見ていた世界に僕は立っていた。
◇
高校2年生になった4月。
クラス替えもあり見知らぬ顔が多い。
1年の頃から馴染みの友達もできない僕は、運良くか悪くか出席番号順で決められた席順で教壇前、いわゆる特等席に座っていた。
朝のホームルームの時間、扉を開けて入ってきた教師……ではなく灰色のローブを着た老人?
クラスメイト達が途端にザワザワとざわめく。
老人は教壇に立ち、こう言った。
「今、我の世界は黒い月の魔力で、多くの魔物達が人々を苦しめておる。各国の騎士団や傭兵、冒険者達も力を尽くしておるが、いかんせん聖邪の天秤は大きく邪に傾いておる。皆の力を我の世界に貸してはくれんか」
マジ?
如何にもって雰囲気の老人だが、ただの中二の頭がいかれた爺さんって可能性も高い。
クラスがさらにざわめく。
「ふ、不法侵入者!」
「誰か先生呼んでこい!」
「いや、110番!」
「爺い!ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!」
「チートスキルは貰えるんですか?」
「ハーレム出来ますか?」
「ケモミミ必須です!」
最後の質問をしたのはオタクグループの人達だ。
僕もラノベは大好きだが、彼らは18禁ジャンルの話を余裕で語る、キモエロなオタクトリオと周りからも言われている。
「異世界転移者には特別なスキルが与えられる。
勇者になる者、聖女になる者、賢者になる者もおるじゃろう。
運悪く使えないスキルを取得する者もおる。
しかし今なら空間収納袋(小)を全員にプレゼント!
更に10連ガチャも付けちゃうぞい!」
うわ~、うさんくせぇ~。
「我の世界に来てくれる者は、我と共に『異世界転移』と唱和するのじゃ。異世界転移!」
「「「異世界転移!」」」
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