第18話 渡し屋とおにぎり

「年上なのは多分合ってますが、俺は勇者でも聖者でもない、ただの渡し屋です」


 黒猫獣人の青年は、右手に持ったままのポーション容器を異空間倉庫に戻し、上着の内ポケットから懐中時計型の魔導通信機を取り出して見せた。

 その魔道具が、渡し屋と呼ばれる移動魔法使いたちに配布される物であることは、マエルも知っている。


「クルスと呼んで下さい」


 青年はそう名乗った。

 彼は魔導通信機を内ポケットに戻すと、異空間倉庫から雑穀ごはんのおにぎりを取り出してマエルに差し出す。


「そろそろ固形物も食べられますよね? これ食べて下さい」

「えっ、そんな……悪いです……」


 マエルは断ろうとしたが、腹は正直だ。

 グゥ~ッという音がして、少年は恥ずかしさで赤面した。


「いいから食べて下さい。餓死するまで飲まず食わずなんてダメですよ」

「は、はい……」


 半ば強引に手渡され、観念してかぶりつくと、おにぎりはまだ温かく、塩気と雑穀の甘味がほどよくて美味しい。

 マエルは食欲のままにガツガツと食べ始めた。

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