N15

約10億年後


探査船アステリオンが受信したN15(エヌイチゴ)は古い文明の言語においてネフ・イシュと発音される語の転写だった。意味は、忘れられた者。後(のち)に分かる文明においてはネフェシュとも呼ばれていた。意味は魂、生命、命、息、人、生物全体、生命活動そのものを指す。


N1-静寂の文明-


言葉を捨て、思考を捨て、ついには呼吸すら忘れた。文明は音もなく消えた。


沈黙


N2-水鏡の民-


海と同化することを理想とし、やがて肉体も都市も水へと溶けた。


溶解


N3-天文の徒-


天を読みすぎ、天に呑まれた。巨大隕石が彼らの都を貫いた。


星の落下


N4-鉄の王国-


機械を崇め、鉄を神とした。だが鉄は熱を帯び、都市は赤く燃え尽きた。


過熱


N5-夢語りの民-


夢を現実より尊び、ついには誰一人として目を覚まさなかった。


昏睡


N6-風の遊牧者-


風を追い、風と共に生きた。ある日、風が止み、彼らもまた姿を消した。


散逸


N7-深層の民-


惑星の深くへ深くへと潜り、ついには大地の重みに押し潰された。


圧壊


N8-光の書記-


光を操り、光を記録し、光に魅入られ、光に焼かれた。


盲目


N9-調和の共同体-


争いを捨て、完全な調和を得た。しかし調和は変化を拒み、文明は静かに朽ちた。


停滞


N10-空虚の哲人-


存在の意味を問い続け、ついには存在しないという結論に至り、自らを消した。


自己消去


N11-獣と歩む民-


動物と共存を試みたが、境界を曖昧にしすぎた。ある夜、獣たちが主となった。


逆襲


N12-天空の都-


空に都市を浮かべたが、支柱となる理論が崩れ、都は空より堕ちた。


落下


N13-記憶の収集者-


全てを記録しようとした。記憶は増えすぎ、文明の精神は耐えられなかった。


過負荷


N14-永遠を求めた民-


死を克服しようとし、死より恐ろしい変質を得た。文明は形を保てなくなった。


不死の失敗


N15-忘れられた者(ネフ・イシュ)-


記録庫には空白のみが残る。彼らが何を恐れ、何に呑まれたのか、ただ一つの語だけが残された。


N15

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