星は往く
遠野はら
星は往く
子供の頃はいつも上を見ていた。背の高い父が僕を見つめて頭を撫でる。髪を結んだ母の料理をしている背中を掴む。その度に見上げていた。
それなのにいつからか靴ばかり見るようになった。躓かないように、誰とも目を合わせないように生きていた。これが大人だと思って生きてきた。
そんなある日、不意に飛んできたボールが額に当たって倒れて、僕は久しぶりに夜空を見た。暗闇に浮かぶ光の粒。きっと一万年、百億年先かもしれない。そして気づいた。
ちっぽけな宇宙の、ちっぽけな銀河の、ちっぽけな星の、ちっぽけな国の、ちっぽけな生命体。忙しい日常で忘れていたこと。
星を見ると悩みが木の葉みたいに軽くなって、どこかへ運ばれていく気がする。
やっと僕は立ち上がって、前を向いて歩き始める。心無しか気分はさっきよりも晴れている。
星は往く 遠野はら @39117
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます