第8章 モデルとしての試練(中編)

撮影は午前から始まり、午後にかけて屋外ロケに移行した。風が強く、衣装や髪が乱れるたびにスタッフが駆け寄る。


「紗良ちゃん、もう一度ポーズをお願いします」

何度も繰り返される指示に、紗良の体は疲労で重く、微妙に呼吸も荒くなる。


緊迫の瞬間


突然、風が強く吹き、紗良の衣装の一部がめくれ上がる。スタッフが慌てて直すが、その瞬間、心臓が一気に跳ね上がる。


「だ、大丈夫……」

心の中で必死に繰り返す。外での撮影は自由に見えるが、完璧を求められるモデルの世界は、学校での緊張と同じくらい容赦がない。


学校からの連絡


その合間に、スマホが震える。学校からの通知だ。


「噂の件、ちょっと話がある」


胸がぎゅっと締め付けられる。ここで返事をすれば、撮影に支障が出る。しかし無視すれば、学校での問題は膨らむ。


「どうしよう……」

深呼吸を繰り返し、笑顔を保ちながらも、焦燥が心を覆う。二つの世界を同時に生きる少女にとって、この瞬間は精神的な限界に近かった。


心の揺れ


撮影の合間、鏡の前でポーズを取りながら、紗良は自分の心と向き合う。


「私は……普通の生活も守りたい。でも、モデルとしても完璧でいなきゃ」

小さくつぶやき、肩を落とす。焦燥、孤独、緊張――それらが一度に押し寄せ、胸の奥で渦巻く。


鏡の中の神谷颯の顔は完璧だが、心の奥では恐怖と不安が消えることはない。二つの世界を生きる少女の戦いは、まだ続いていた。

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