第2話「憑依した妖怪の正体」
気付けば僕はいつの間にかベッドで寝かされていた。起きて周囲を見渡した時に懐かしいと思える光景が脳裏を刺激する。
つい内心で恋心が騒ぐ。僕が起きたところは偶に入れてもらっていた珠美の部屋だった。そこで寝ている理由が見当たらなくて思い出そうとするが、記憶を呼び起こす際に違和感を味わった。
「可笑しいなぁ……? 何で人の部屋で寝てたんだろう。思いだ当たらない」
すると、扉が開いた音で誰かが入室して来たことが分かった。咄嗟に焦った俺は隠れようとしてベッドから降りる寸前で声を掛けられる。
「別に逃げなくても大丈夫よ。私が自分から寝かせたんだからね? それよりも体調は大丈夫かしら?」
「え、えーと……。何故か珠美から優しさを感じることに疑問があるんだよなぁ……。で、事情を知りたいんだけどぉ……」
「今から説明するわ。今回は被害者だから厳しくするともりはないのよね。約束するから冷静に聞いて欲しいのよ。駄目かしら?」
「べ、別に問題ない……。でも、本当に心当たりがないんだ。早く珠美の部屋にいる理由が知りたいな?」
「分かった。これは貴方が帰宅中に私と交戦していた妖怪から身体を乗っ取られて今は様子が見たくて入れたのよ。だから、あまり気にしなくて良いわ。今回だけ特別だからね?」
「あ、あぁ……! 思い出した⁉︎ あの時に触れられてから意識がなくなって気付いたら寝かされていたんだ。そっか。僕は支配されているのか?」
「精神は問題ない。けど、貴方はどんなタイミングで身体を操られるか分からないわ。それでも貴方を乗っ取った妖怪が危害を加えない条件で留めることに決めたのよ。だから、今度から部活は続けられないと理解して欲しいのよね? それが理解できなくても強制させてもらうから潔く諦めなさい」
珠美が告げたことは俺を大きく驚愕させる内容だと分かって言っているのか疑問に思った。これまで頑張って来た部活動を辞めた後は俺がどうしたら良いか今後から考えるつもりだった。
すると、珠美が耳元に向けて一言だけ発する。それを聞いて驚愕するなんて普通だと思えてしまう。
「う、嘘だろ……? 部活動は僕の生き甲斐でぇ……は? ば、バカなっ……⁉︎」
「当たり前でしょ。貴方はすでに桁違いの力を持っている。それは貴方に憑依した妖怪が人を殺める力を持つが故故の判断なのよ。悪いと思ってるけど、過去は変えられないわ。だから、協力して欲しいのよね? 駄目かしら?」
「僕に何が出来るんだよぉ……」
そうやって急すぎる話を持ち掛けられて混乱する中、珠美は一呼吸を吐いてから一言だけ告げる。それは僕と協力を要求する内容で俺としては驚愕すぎる話だった。
「貴方は私と戦えるようになったのよ。癪に障るけど、憑依している妖怪と協力されば貴方も異術師になれるわ。だから、貴方は今度から一緒に強くなって妖怪と戦って行くんだからね! それで駄目なら私が持たないからお願い出来ないかしら……?」
俯いた時の珠美がか弱くて可愛くて見えた。こんな姿が見られるなんて予期していなかったが故に凄く惹かれた。
もし、仮に珠美と仕事が出来たなら交際してもらえるのかと考えてしまう。脳内で部活動が継続不能となる以上に珠美を惹くチャンスだと心が騒いでいる。
これを逃して珠美と結婚する夢が叶う将来を見ることが出来るのか疑問を抱いて迷った。今から素直に了承して珠美の仕事が手伝えれば俺としても満足する。
しばらく考えた。思考はすでに了承したい一心で染まっている。
しかし、それが正しいか考えないで受け入れることは人生にやり直せないほどの後悔が伴うかも知れない。
それを踏まえて考えていると珠美は待ち侘びた様子を窺わせながら視線が自然と逸れる。
そして視線を俺に戻して再び回答が求められる。珠美としては決心して欲しくてしょうがない表情を窺わせているところが了承する他に選択を覚悟に追い込む。
「分かったよ。それなら部活動は辞める。仕方のないことだ。お前が悪い訳じゃないことは良く理解している。だから、僕が諦めてお前を傍で支えて行くことを選びたいと思ったんだ。了承させてもらうわ」
「え⁉︎ 本当に良いのかしら⁉︎ うわぁ〜。マジで部活動を辞めて協力するなんて腰抜けた奴が出来る訳ないと思ってたかも知れないわ。でも、今の回答は正解だから心配しないでくれるかしら? 貴方を絶対に後悔させない自信ならあるのよ。かれからはよろしくお願いしますね?」
この時に見せた珠美の表情は凄く可愛かった。謙虚で穢れていない心が表した表情に心を惹かれて決断して良かったと思わされる。
それ故に不安が吹き飛ぶ感覚を味わう。かれが片思いしている異性と交わす青春だと思った瞬間に舞が上がった。それを視覚で分からない程度に抑えながら一言だけ告げる。
「本当は幼い頃からお前と同じ仕事がしたかった。けど、それが叶わない日を受け入れた時から僕は違うことで頑張るんだって息巻いた。それでも努力して来たことは散った。それと引き換えに本来の夢が叶うなんて思わなかったから少しだけ感謝してる。本当にありがとうな!」
「……はっ⁉︎」
僕が放った何気ない感謝を聞いた珠美は表情が変化する。驚愕したような表情から窺えることは単純に予想外の発言だったと言うだけ。それ以外に思わされたことがあっても自慢して満たせるほどでもない。そう思っていたが……。
「……ふふっ。見直したよ。貴方から期待もしてなかった言葉が出て来た時は驚いたわ。だから、かれから対等になれたよのね?」
珠美が満面の笑みを浮かべながら告げた言葉は俺を期待する意味合いが込められていた。それだけで目から涙が溢れそうになる衝動は強く心を打った。
(僕は片思いで終わる運命が変わって行く瞬間を迎えられた幸福に今は満足だった。期待されていると言う話が出た時から自分の可能性を大きく信じられる展開は訪れるんだと理解した。後は期待に応えるだけかも知れないな。胸を張って珠美と歩けるように頑張ろう!)
「よろしくお願いするな!」
「こちらこそ。お願いさせてもらうわ。一緒に戦いましょうね?」
こうして僕に訪れた変化は今後を期待させるものとなった。
この気持ちを持って好きな異性と歩み出す瞬間はとんでもなく最高だ。けど、実際は凄まじく過酷で挫けるかも知れない場面が目立つ姿を見せるだろう。それでも僕が歩み始めた一歩は本当に心から後悔しないものか確かめてみたかった。
※ ※ ※
俺が清原宅に招かれるなんて珍しい。あいつは俺を遠ざけているんだと認識していたが、意外と自ら呼び出すほどの要件があったらしい。それは聞いてみないと分からないだろうと玄関前に立って改めた。
ガラガラ
「失礼する! 今回はこちらに呼び出されて赴いた安藤楽典と申す! どうか早急に出迎えて頂けると助かる!」
すると、玄関から眺められる範囲に家の者だと思われる女性が現れる。
「どうも〜! 良くお越し頂きました。いつも話し合われる部屋で珠美様が待っています」
「失礼します」
丁寧に挨拶してから上がらせてもらう。
見た限りは綺麗に掃除されている様子が窺えて客人を招く準備は十分だと思える。やはり、今から会う奴が汚い家で過ごせるなんて思えないことから当然だと認識するのが普通だろう。
(はぁ。大して思うほどにもないことを考えてどうするんだ? 無駄な思考は省かないと身が持たないだろ)
特に珍しくもない思考が働いて少し疲労を感じる。精神疲労と呼べるに相当する負担が加わって足取りは重くなる。
けれど、重いから特別を求めたいと思う心は持ち合わせていない。とにかく話を済ませて休憩時間が増やせるように努める。
そして珠美が待つ部屋まで来る。息を整えてから入室すると俺を待ち伏せていたのは珠美と滅多に顔を合わせない英助の姿だった。
どうやら二人は取り込んでいたようだが、それよりも約束を優先させる方針が取られる。とにかく呼び出して来た珠美から話を聞いて済ませたいと思った。
「少し見ない間に男を連れ込んでいるなんて意外だな? それとも理由があるなら聞かせてもらっても良いか?」
「別に嫌らしいことが目的で連れて来たんじゃないわ。こいつが今回を左右する人物だから同行してるのよ」
「分かった。けど、どんな口実があっても疑惑を寄せる状況下は他者が見て怪しいと思えてしまうだろう。ま、早く話なら済ませよう。俺は早急に済ませて自宅で寝る予定があったんだからよ」
「十分に分かっているわ。それじゃあ話するから一回で理解しなさい」
俺は特に珠美が男と何をしていようと構わないが、珍しい一面だと思って聞いてみた。
それよりも普段から距離を取って過ごていた英助が今回の話と何の関係性を持っているのかが知りたかった。それを聞いて早く解決させて帰宅する。それだけが頭を支配して適当に聞く姿勢を取った。
「実は私が受けた依頼で相手した妖怪に英助は憑依されてしまったのよね。それで相手側が交渉を持ち掛けた。それは生かしてもらう代わりに人々を傷付けないと言う条件で。そいつの目的は知らないわ。けど、目的が達成された以降は身体から抜けて解放する約束を交わせるらしいのよ」
「ほう? 人に憑依して存在を消されたくないと来たか。それを呑めば英助は生きることが出来るんだな? そらなら話は早い」
俺が聞いた内容から整理した結果、即座に牙を向いた発言が放たれる。
「今すぐ俺から殺してやろう。正直妖怪と交渉するつもりはない。例え解放してもらえると約束されても殺す。何故なら口約束でしかないからだ」
「はぁ⁉︎ それでも正気かしら? 英助も死んでしまうのよ! 本当に真面目な話をひているんだからね!」
「分かっている。だから、殺さないと駄目だと言っている。仮に解放したとしても憑依された身体はどんな後遺症を残すか分からない。憑依されていた身体に呪印が残されればそいつは間違いなく苦しむ。もはや、人を殺戮して回る鬼にもなる。それを踏まえれば話は結論は見えたはずだろ?」
俺の回答は少し残酷だと思われて良い話だった。少しぐらいは間を置いてから処分するか考えれば良いが、それでも何となく生かしておけないと判断した。それが最も未来保証が整っているし、見張らなくても問題ないと言えるからだ。
何よりも後遺症が残ることに警戒するべき点はある。だから、例え珠美が悲しむ結果を残しても俺は殺した方が世間のためになると考えた。
「ま、まさか僕は殺されるのか?」
「少なからず俺から下すなら即座に処分したい。それが不満なら今から逃げたらどうだ?」
「……え、え? これから逃げてもいずれ追い付かれるんだろ? それなら生きても良いと言う交渉を交わして逃げ続ける人生は回避したいよ!」
英助は急ながら必死に思いを述べる。その一言は感情が込められているため、珠美は酷く辛そうな表情を見せる。もちろん殺されないといけないかと知れない奴からしてみれば悲惨な話だろう。だから、俺は生きるチャンスを提示する。
「そこで生存を賭けた勝負をしよう。俺と交戦してお前が少しでも圧倒できた時は生存すると良い。だが、少しも至らないなら好きなタイミングで殺す……!」
「……ま、マジか⁉︎」
俺は本気で告げた。それに対する反応は凄く厳しい課題を与えられて判断に困る人間が現れる。ここまでは生存させても良い人間性を確立している。
けど、こちらの交渉条件は変わらない。俺としては生きるためなら条件を守る選択は必須だと考えている。
(単純に目的としては交戦した上で実力を窺いたいからだ。事前に実力が知れた上なら生かしても問題はない。もし、強大すぎる力を待っているなら人格が英助である時に殺すしか手段は残されてない。それを悟られないで実行する必要性があるだろう)
今回の一戦に目的が掲げられた時点で大きく必要だと求めたい。
とにかく憑依した妖怪がどれだけの脅威か知る機会を設けた。これが今後に大きな影響与えることは確かであると言える。だから、ちゃんと見極めて処分の有無笑判断したかった。
※ ※ ※
(どうやら俺が出て行く交戦しないと生存は保証されないらしいな? それなら出ない訳にもいかないだろう)
英助は俺が考えていることを知らない。精神を司るところから外れた箇所に位置しているが故の思考共有は断たれてた状態だ。
加えて内側から呪印を結ばせた時に俺と奴の魂が繋がっていることで除外は困難である。これらを待ち合わせた俺を簡単に取り除けると思わない方が良いことは確かだと言えて心に余裕を持った。
(実力が確かめたいなら交戦してやる。その前に英助と今後はどうして行くか方針を知らせて置かないと釣り合わないだろう。それじゃあ声を掛けて人格が入れ替えられることを今から開示する……!)
俺は英助を尋ねた。それは神経を通して脳内に伝わる。伝わった声はやがて会話を実現させて内心で交渉が交わされる。
『ん? 誰だ?』
「初めて話すから驚いたと思うが話を聞け。今から教えることは交渉だと思って聞いてもらう」
『はぁ⁉︎ まさか妖怪の方から話し掛けて来るのかぁ⁉︎』
「取り敢えず他に話を漏らんじゃない。今回は二人だけで話がしたいからな?」
そんな感じで精神会話が始まる。俺と英助だけの交渉を交わして本来から掲げていた目的を遂行するために行動した。
天命を巡る異術師の怪奇譚 紅薔薇棘丸(旧名:詩星銀河) @mukuromukuromukuro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。天命を巡る異術師の怪奇譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます