第13話 2人の初舞台(桂の視点)
2028/10/14(土)AM9:00
この日俺達は社内のスタジオに来ていた。明未と蘭が、CMのナレーションの台詞のアフレコを、駆け出しの声優さんと共に行なう為だ。
「初めまして。青鬼プロ所属でデビュー1年目の『
「同じく青鬼プロ所属でデビュー1年目の『
「は、初めまして。フォビドゥンレコード所属の鶴牧 明未と申します。今回ナレーションと『鶴牧 明未』を演じさせて頂きます。まだデビューしてませんが宜しくお願い致します!」
「同じくフォビドゥンレコード所属の鶴牧 蘭と申します。今回ナレーションと『鶴牧 蘭』を演じさせて頂くっす。ボクもまだデビューしてないっすけど、宜しくお願いするっす!」
こんな感じで挨拶を交わし合い、白木さんが更に続ける。
「実は今回の仕事、私達ギャラ0なんだけど、マネージャーから『今後の活動に絶対プラスになるから受けて来い』って言われて来たんだよ」
「どう今後に活かされるか迄は説明されなかったけど…。お互い頑張ろう、収益0円同士!」
「はい。わたし達も収益0円ですが、一生懸命頑張ります!」
「ボクもっす!」
こうして、アフレコが始まった。
悪霊A「ぐへへへへ、お前達には生贄になって貰うぞ~!」
明未「わたし達に、ここで●ねって言うの?」
悪霊B「そうだ。お前達の事、絶対離さないぞ~!」
蘭「皆の為にも、ボクは●にません!」
悪霊A.B「うわあああ!」
蘭「この病院の患者さんは、誰も●なせない」
明未「誰もが、健やかに寿命を全う出来ますように」
明未と蘭「日本青十字陵」
数秒間の沈黙後、監督さんが「ハイ、OKで~す!」と言い、アフレコを終えた。
「はあ~、緊張したよ~!」
「ボクもっす!。てかやっぱお姉さん方上手いっすねえ~」
「まあ声優学校で散々学んで来たからね~、高い授業料払って」
「ホントそうだよね~。ここに居る皆が、好きな事1本で生活出来るようになれると良いね」
こうして人生初のアフレコも、色々戸惑いながらも何とか無事終えて、その日を終えた。
2028/10/15(日)AM9:00
俺達はスタジオにデビューシングル用の2曲を携えてレコーディングを行なう事にした。メイン曲のタイトルは『誰も死なせない』で、ほぼ明未が作詞した。ちなみにカップリング曲のタイトルは『痛いよ、臭いよ、気持ち悪いよ!』で、蘭がほぼ作詞した。理由は『明未が記者会見当日に言う台詞を流行らせたい』との事だが…。色んな意味で戸惑いながらも、何とか無事終える事が出来た。
2028/10/22(日)AM8:30
撮影当日、テストを終えたママが地元から朝一で来てくれて、俺達は家族4人共々に、都内にある『日本青十字陵』へと向かった。到着すると早速。
「初めまして皆さん。当病院会長の『
「同じく当病院院長の『
「初めまして、監督の『
「は、初めまして。Digital Tattooの鶴牧 明未です、宜しくお願いします!」
「同じくDigital Tattooの鶴牧 蘭っす、宜しくお願いするっす!」
「初めまして。Digital Tattooのプロデューサー兼、この子達の父親の鶴牧 桂です。本日は宜しくお願い致します」
「同じくこの人の妻兼、この2人の母の鶴牧 あびるです、宜しくお願いしま~す♪」
「Digital Tattooのマネージャー、古田 沙里菜です。宜しくお願い致します」
こんな感じでお互いに自己紹介し合った。そんな中、院長が「もし君達が性病に罹患したら、是非当院に通いたまえ」と言うと明未が「お、お気遣い有り難う御座います…。」と言うと蘭が「ホントは性病にならないのが1番良いんすけどね~…。」と言った、ごもっともだ…。
院長が「ここが、当院のシンボルとなっている十字陵だ」と説明され、皆で十字陵を見上げると、明未が圧倒されていた。
「この十字陵のコンセプトは、階段が『治療中』という意味で、治療を終えた患者さんが頂上から自由に羽ばたいて行くように元気になって欲しい、という理念の基に作られた」と院長が言うとわたしは「そ、そうなんですね…。」と答えると会長が。
「明未ちゃん今『こんなしょうもない物作るお金があるなら、それを治療費に回せば良いのに』とか思ったでしょ?」
「お、想ってないですよそんな事!」
「これからその『しょうもない物』を背景にMV撮るんだよ君達は」
「想ってないですから~!」
院長の更なるツッコミに明未が全力で否定すると、その場が大爆笑の渦に包まれた。そんな中、監督が。
「早速CMの撮影を行なう。先ず明未と蘭が手を繋ぎ合いながら階段を登る。その後、頂上の十字の所で手を繋ぎながら丘を見下ろした直後、悪霊に羽交い絞めされてるように動き、それを振り払う動きをしろ。それを明未と蘭が前日アフレコしたナレーションを編集で合わせる。以上だ、早速始めるぞ!」
撮影開始、明未と蘭は監督の指示通りに動き、何度か失敗しながらもOKが出て、CMの撮影は終了した。
「カーット!。OK、これでCMの撮影は終了だ!。午後はMVの撮影を行なうから今の内に昼飯食っとけ!」と言われ、俺達はロケ弁を食べて、午後のMV撮影に備えた。そして午後から明未と蘭が病院内で患者さんに寄り添うシーンを交えつつ、十字陵をバックに歌うシーンを撮影してそれらも滞りなく終わり、ママは地元へ帰り、俺達も寮へと戻ってその日を終えた。
翌日から記者会見前日迄の約5週間、明未と蘭はギター弾きながら歌えるようになる為、学校帰りにスタジオで講師を交えて練習に勤しんだ。後で聞いた話だが、その間宮城のローカルニュースで明未と蘭がレ●プされた事が、2人の名前を伏せた状態でさらっと報じられたそうだ…。
2028/11/28(火)
午前7時、俺達は起きて速攻で朝のニュースを観ると、最初に蘭の事件を報道し、次いで明未の事件を報道した、そして…。
「最後に安藤容疑者は調べに対し『まずいと思ったが欲望を抑えられなかった、それ位可愛かった』と供述しております。最後に、この2人の事件の詳細は、今日の午後2時に記者会見でお伝え致します。尚、彼女達のユニット、Digital Tattooのシングルは本日発売となります」とキャスターが報じると明未が。
「パパ、気持ち悪いよ安藤…。」と言うと蘭が「ネットでもボクらへの同情のコメントと加害者への誹謗中傷で大荒れっす!」と言うと俺も「当然だ、それだけの事をした訳だから…。」と言った傍から、俺のLUINEに大量の通知が来ていた。「何じゃこりゃ!?」と思いながら確認すると。
「お前地元で何やってんだ?」
「あの小さくて可愛い子とどこで知り合った?」
「俺達ともう1回音楽活動やんねえか?」
「他のメンバーの顔写ってる画像送って」
主にこんな感じの内容の通知が大量に来た事を言うと、蘭が「調子の良い奴等っすね~…。」と言う横で明未が苦笑いしていた…。そして今日から日本青十字陵で撮影したCMが流れ始めた。
翌日、俺達は会場に入って入念にリハーサルを行ない、迎えた本番。恐らく大半の視聴者が知りたいのは、明未と蘭の顔が見たい。後、彼女達がどんな目に遭わされたかだろう…。先ず桜庭さんが登場して俺達を紹介し、社長、蘭、明未、俺の順で登場し、指定の席に着いた。俺達は社長とママが用意した台本の通りに喋る中、ある記者が。
「明未さん。安藤容疑者にヤラれた時、どんなお気持ちでしたか?」と不躾な質問を投げ掛けて来た。てか(小6女児にする質問じゃねえだろ!)とツッコミたい気持ちを堪えてると、明未がママに用意された台詞を言った。
「本当に、痛いし、臭いし、気持ち悪かったです、まるで野獣みたいでした…。あと安藤さんがパパに『お前のケツの穴も掘ってやる、と伝えて』とも言われました…。」
と泣きながらそう言うと、別の記者が「という事は、明未さんのファーストキスの相手も安藤容疑者という事になりますでしょうか?」と聞いて来やがった。明未は一呼吸置いて、無表情で「はい…。」と答えた。そして蘭も事件の詳細を涙ながらに語ると、俺も。
「この子達の父親として、そして一人の人間として彼等の行ないを、本当に許せません」と毅然と答えた。そんな中、別の記者が。
「桂さんはその女性とご結婚されたんですよね?。もう桂さんと性交渉は行なったでしょうか?。ていうかその方はもう成人してますでしょうか?」と意地悪な質問をして来た。更に別の記者が。
「桂さんは、その方が初めてのお相手でしょうか?。過去に他の女性とお付き合いされた事とか御座いますか?」と本当に失礼な質問をして来やがったが、俺は冷静になって。
「私ももう32歳の良い歳した大人ですので、恋愛経験は一応人並みにはございます。後、お相手の女性は一般人ですのでそっとしといてあげて下さい…。」
と何とかそう言い切った。他にも色々な質問が飛び交う中、『誰も死なせない』のオケを流し、彼女達の歌を、エレキギターの弾き語りで披露した。最後にある記者が明未と蘭に。
「蘭さんと明未さんは同性愛者で、お互い愛し合ってるんですよね?。それを今この場で証明して頂けますか?。ビジネスレ●ビアンじゃない、という事を!」と言い出しやがった、明未が戸惑いながら。
「しょっ!、証明って、どうやって?」
「解ったっす」
と蘭が能面の表情で言うとなんと、明未に口づけしやがった!。会場全体が唖然とする中、記者会見は終わった…。
会見終了後、社長が「蘭、何であんな事をした?」と訝し気な顔で聞くと蘭が。
「だってああでもしないと信じて貰えなさそうな感じだったんで、つい…。でもこれで、再生数うなぎ上りっすよ!。今回の記者会見のノーカット版(※1)の再生回数も、曲のDL数も再生回数も!。早速エゴサーチしてみるっす!」
「蘭ちゃんカワイイ、中1にしてはおっ●いデケー!」
「この桂って人勝ち組じゃね?」
「明未ちゃんに直接罵られて~!」
「明未と蘭ってガチのレ●だったんだ!」
これらを観て俺は「これじゃ本当にデジタルタトゥーになっちまうぞ?」と不安に苛まれたが、それとは裏腹にMyTubeにアップロードした動画(※1)が物凄い勢いで再生されていた、特に蘭が明未に口づけしたシーンがピンポイントで…。
その日の午後8時、俺達は夕飯を食べてお風呂に入り終え、オリコミのデイリーランキング、CDシングル部門でデジタトゥが初登場1位で、しかも100万枚以上も売れた事を明未と蘭に伝えると、明未が大喜びしながら。
「やったよ蘭お姉ちゃん、わたし達1位だってよ~。しかもミリオン!」
「まあ、収益は0っすけどね…。」
と蘭は今一つ素直に喜べない様子だ。
「パパ、この事Berryenの皆には言うんすか?」
「蒼絵以外には今は伝えないでおこう、特に瑠実には…。それよりママに電話してあげたらどうだ?」
俺がそう言うと明未はママに、蘭は蒼絵にそれぞれ電話した。電話越しにママと蒼絵の喜びの声が聞こえて来て『ママが土曜日来る』とも聞こえた。こうして2人共、年頃の女の子相応の生活を謳歌出来たみたいで、本当に良かった…。
2028/11/30(木)
俺達は朝食を食べ、ベストホット音楽祭の会場となる大阪ホールへと向かった。控室で蘭が。
「いよいよ音楽番組初出演っすね、緊張して来たっすよ~…。」
「でもこの緊張感、嫌じゃないよ。だって今迄わたし、散々地獄を見せられて来たし。悪い意味でずっと緊張させられて来た訳だし…。」
「それは萎縮って言うんだ明未…。大丈夫だ、俺と古田さんが付いてるから!」
「がっはっはっはっは!、そういう事だ。さあ、いよいよ『Digital Tattoo』の本当の意味での初陣だ。思いっ切りやって来い!」
と古田さんが背中を押してくれた、そして…。
「明未クン、ボク達の最高の音楽を届けに行こうっす!」と蘭が言うと明未が「うん!」と手を繋いでステージに向かい、司会者が同情を誘うように彼女達を紹介し、パフォーマンスを披露した!
本番終了後、俺が「お疲れ」と迎えると明未が「ああ緊張した~!」と充実した顔で言うと蘭が「けど楽しかったっす~!」と同じく充実した顔でそう言い合ってると、古田さんが「がっはっはっはっは!、喜べ皆、先程司会者の宮野さんのマネージャーさんが『お前達を明日(みやの屋さん)に出してやる』と仰って下さったぞ!」と言われ、明未が。
「ホントですか?、やったね~蘭お姉ちゃん!。あのお昼の番組、よく晃子が観てたから、わたしでも知ってるよ!」
「ボクの元母さんもよく観てたっす!」
「何かどんどんオファーが舞い込んで来るな…。」
俺もこんな感じで喜び合う中、寮のある東京へと帰って行った…。
2028/12/1(金)
翌日、俺達は『みやの屋さん』に出演させて頂く為に明未と蘭は学校を休んだ。司会者から「明未ちゃん、その日に知り合ったおっさんにヤられて気持ち悪かったやろ?」との問いに明未は「はい。本当に、痛いし、臭いし、気持ち悪かったです…。」と言うと蘭も「ボクもっす!」と言うと会場は大爆笑の渦に包まれて、無事生放送を終えた。
本番終了後、夕飯を食べつつ、2人が学校での出来事を話した、具体的には。
「蘭さんと明未さんってどうやって知り合ったの?」
「2人は桂さんと血は繋がってないんでしょ?」
「2人のお母さんってどんな人?」
「てか2人共前の家族や学校から相当酷い目に遭わされたんでしょ?、記者会見観たよ!」
「印税何百万円も入ってもうウハウハ?」
と皆から言われた事を一通り言い終えた後、蘭が。
「『今は宣伝の為に色んな番組に出させて貰ってるんだよ』と言っといたよ~」と言った。蘭も続けて「『ていうかボクら、今回印税入って来ないっす…。』と言ってやったっす!」とそれぞれ楽しそうに語り合っていた。最後にママが。
「明日そっちに行くから、パパにも宜しく言っといてね~♪」
「ママ、テスト大丈夫なの?」
「だってあーし、もう赤点取らなきゃ卒業出来るもん。テストなんかより2人の晴れ舞台の方が大事だよ!」
「ママ、無理しないでね?」
とこんな感じで語り合い、その日を終えた…。
本当のファーストキス(明未の視点)
2028/9/17(日)PM4:00
遡る事約2カ月前、あびるお姉ちゃんがわたしを庇ってくれた事を、今回のボイトレメニュー用紙を受け取るついでに、どうしても桂お兄ちゃんに伝えたくて、わたしは1人で山野家へと向かった。玄関先で敏郎さんが出迎え、桂お兄ちゃんが寝てると伝えられ、こう返す。
「そうなんですか。でしたら忘れ物を取って来ても良いでしょうか?、そしたらすぐ帰ります」
そう言ってお邪魔し、桂お兄ちゃんの部屋にそっと入り、メモ帳と作詞本の切れ端を取り、それと無く桂お兄ちゃんを見ると、仰向けになって●んだように眠りこけている、本当に疲れてるんだ…。わたしはそっと近付き、小声で「いつもわたしの為に色々やってくれて、本当に有り難う」と言って部屋を出ようとした時、わたしも何を想ってか?、キスしたくなった。顔を近付ける分だけ、鼓動が高まって行く。
(キスくらい、良い、よね?。わたしの初恋の相手なんだから…。)
そしてわたしは、寝ている桂お兄ちゃんの唇に、わたしの唇をそっと重ねた。桂お兄ちゃんの口からは、大人の男性特有の煙草臭さが無かった、むしろちょっとだけ良い匂いがした、ような気がした…。
「桂お兄ちゃん、好き、大好き…。」
わたしは顔をそっと離して、小声でそう呟くと。
「あら智加ちゃん、忘れ物は見つかった?」
部屋の出入り口の方から、悦子さんの声が聞こえた。
「は、はい!。では、わたしはこれで失礼します!」
わたしは慌ててそう答えて、急いで部屋を出て山野家を後にし、そして帰宅の途に着いた…。その2週間後、安藤からああいう目に遭わされた事が本当に無念で悔しくて、そして痛くて気持ち悪かったけど、ファーストキスだけでも好きな人に捧げる事が出来て、本当に良かった…。
わたしの本当のファーストキスの相手は、桂お兄ちゃんだ。当の本人は勿論知らない、筈…。この事は誰にも言わずに、わたしの心の中に今はそっと閉まっておこう、言っても誰も幸せにならないどころか、大騒ぎになりそうだし…。そして記者のファーストキスの相手に関する質問に、わたしは一呼吸置いてポーカーフェイスで「はい…。」とだけ答えてやり過ごした…。
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