警視庁捜査一課に配属されたばかりの新人刑事の司卓也は、初めての現場で女子高生を人質に取った半グレと遭遇する。
震える拳銃を構える卓也を救ったのは、型破りな先輩刑事、大門俊樹(トシさん)だった。
こうして幕を開ける本作は、読み進めていくうちに「あれ?普通の日本ではないぞ?」と気づかされていきます。
なによりトシさんのキャラクターが強烈で、頼れるけれど「なるべく一緒に仕事はしたくない」と思わせる圧倒的な存在感。
対する卓也は真面目な優等生で正義感が強く、トシさんへのツッコミ役に回ってくれます。
コミカルとシリアスの落差が大きく、魂の覚醒から「鬼夜叉」へと繋がっていく怒涛の展開に引き込まれました。
幕末の剣士、沖田総司が現代の刑事としてよみがえる本作。
序盤を拝読したうえでの感想にはなりますが、「魂の心音」の謎など、この先の展開が非常に気になる作品です。
ぜひトシさんの強烈なパワーと歴史を感じながら、謎へと迫る物語をご堪能ください。
このお話は、警視庁捜査一課の新人刑事が、幕末の天才剣士・沖田総司の輪廻転生体として覚醒し、前世の同志たちと令和の連続殺人事件に立ち向かう物語です。新人の彼は、過激な相棒と事件に取り組みます。彼は、長髪の女性を狙う「赤い切り裂き魔」事件の捜査に加わることになりました。科警研警視による地理的プロファイリングを手掛かりに遊園地を警戒するなか、犯人は巧妙な手口で生贄を襲撃します。同僚も人質となり、彼は銃撃を受けて意識を失ってしまいます。その瞬間、彼は、池田屋で戦った沖田総司としての記憶が甦ります。覚醒した彼は土方の生まれ変わりとともに、犯人を制圧します。彼は近藤の生まれ変わりらとともに、現代に転生した新選組の仲間を集める決意を固めます。さあ、物語はどのように展開していくのでしょう。新選組好きのあなた、ぜひいかがですか?
新選組を現代へ転生させる作品は、決して珍しくないのかもしれません。
けれど本作がこれほど鮮やかに成立しているのは、歴史上の有名人を令和へ連れてきたからではありません。
私が最も心を惹かれたのは、そのもっと根底にあるものです。
時代が変わっても、人は何を守るために生きるのか。
その問いが、物語全体を貫いていました。
幕末、剣を手に京の治安を守ろうとした者たちは、令和では警察官となり、法と捜査を武器に人々を守る。
沖田総司だから強い。
土方歳三だから格好いい。
それだけではありません。
沖田総司の優しさと、敵を前にした時の阿修羅のような苛烈さ。土方歳三の大胆不敵な突破力と、仲間や弱者へ向けられる不器用な情。近藤勇の、人を信じ、組織を束ねる器。
歴史上の名前や逸話を借りるだけではなく、その人物が何を大切にして生きたのかという「魂」まで受け継がれているからこそ、彼らが刑事として令和を駆ける姿に強い説得力があります。
そして舞台となる東京もまた、この作品を唯一無二のものにしています。
歌舞伎町、SNS、アイドル文化、公安、反社会組織、ぼったくりバー――。
現代だからこそ起こり得る事件へ、新選組の魂を受け継いだ刑事たちが挑んでいく。
歴史と現代が互いを引き立て合い、「今だから描ける新選組」が見事に形になっていました。
さらに、一つひとつの事件に確かな区切りを持たせながら、その背後にある大きな闇へ少しずつ繋がっていく構成も実に巧みです。
個性豊かな仲間たちとの軽快な掛け合いに笑い、緊迫した捜査に息をのみ、ときに胸を熱くしながら読み進めるうちに、「次の事件」ではなく、「この物語の続きを追いかけたい」と思わされました。
なかでも、病によって志半ばで生涯を終えた沖田総司が、今度こそ命を完全燃焼させようとする姿には、転生という設定以上の切実さを感じます。
これは、英雄たちが現代で再び無双するだけの物語ではありません。
果たせなかった人生を生き直し、過去から受け継いだ信念によって、今を生きる誰かを守ろうとする物語です。
剣は法へ。
けれど、人を守ろうとする魂は変わらない。
その発想と、それを一つの物語として見事に成立させたことに、心から敬意を表します。