業
鎢
業
男には、とあるジンクスがあった。それを信じている、という自覚はなかった。
それは、何かを代償にして何かを得るというものであった。
男は、文化祭の失敗を代償に期末テストの順位が1桁に入ることを望んだ。
すると、文化祭当日は学校に不審者が入り、文化祭そのものが中止になった。そんな状態で受けるテストは到底、受けられるものではなかった。
男は学年9位に入った。しかし男は満足しなかった。
男は失恋を代償に友人との関係を良くする事を望み
2日間の鬱を代償にぐっすり眠れることを望み
全てを代償に、大学受験が上手くいくことを望んだ。
冬が訪れた。しかし男には失恋も鬱も訪れなかった。
そして大学受験の成功も。
男は模試の結果を一目見て、ゴミ箱に破り捨てた。
そして、変わろうと決意した。
それから男は塾に入った。
誰よりも早く塾に来て
誰よりも遅く帰る生活を
3ヶ月と少し続けた。
模試の成績はみるみるうちに上がった。
彼の調子のいい性格も少しづつ改善していった。
男は受験当日を迎えた。
ジンクスや神が居ない中でペンを動かし続けた。
数週間経ってポストに手紙が入った。
合格通知書であった。
男は喜んだ。自分の努力が報われたのだと。
ジンクスなんかなかったんだと。
その時、友人から電話が来た。
それは男の合格を祝うパーティへの招待であった。
男はそれを存分に楽しんだ。酒が入らずとも、
まるで人生の終わりかのようにはしゃぎ回った。
翌日、男は動けなくなった。二日酔いだろうと男は考えた。
2日後、二日酔いは治った。そして驚いたことに、パーティで出会った女性から、デートのお誘いが来た。
男はまた喜んだ。
その女性とのデートはさぞ楽しかった。
男にとって人生で1番の幸福であった。
一生を、この人と過ごしたいと思った。
春休みが終わった。
男はスーツを整え、入学式の準備をした。
親と他愛もない話をし、そろそろ家を出る時間になった。
ドアを開けた。隣からトラックが突っ込んできた。飲酒運転であった。
代償は、きちんと支払われた。
〖業〗
業 鎢 @Tungsten7474
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