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今年最後の一日。ビックイベントがある筈もなく、私は何時もの様に鏡の前に立っていた。
まぁ激動の一年だったけれど。兎にも角にも身体を壊した一年だったけど、アリスグッズに埋もれ、今までの私からしたら若干外見に気を使う一年でもあった。
そんな事を考えて、今日も一日鏡の前に立っていると、ふと、自分の顔の赤みが増している事に気が付いた。顔の右半分と鼻筋。其れがじくじくと赤く、炎症でも起こした様に染まっていた。
心当たりは複数。私は顔を人の体やら枕やらに押し付けていないと眠れない。ちなみに昨日は瑠衣の上半身が犠牲になった。あと冬場の乾燥。特に風呂場で水を浴びてないときの反応。そして連日に続く化粧が原因かも知れない。
ま、平日に化粧をしなくて良い理由付けが一つ出来たので、そこは胸を張ることにしよう。『肌荒れちゃうんでー。頻繁にはしたくないんですー』と。
そうして赤く染った毛穴を見ていると、目元に目がいった。相も変わらず水平線を描き、ビューラーを使っても頑固に上を向くことのない、私の性格と良く似た睫毛であるが、今は角度ではなく、太さに注目する。
マスカラを付けた事が無かった人生だったので、付けるに当たっての保湿として睫毛美容液なるものを朝と夜に添付している。上まつ毛は髪やスネやらと同等にゴン太であったのだが、下まつげはやはり慎ましく細かった。が、今は若干上まつ毛と同じくらいの太さに変化している。……何故か右側だけ。
あのさぁー、何でもかんでも右側だけ炎症起きたり、成長したり、変化ずば抜けるの本当に辞めて欲しいんだけどー。バランス悪いじゃん。瞼だけだよ。初めに瞼二重になったの。
そう内心ツッコんでいると、横から気配がした。振り向くと瑠衣がジト目で此方を見つめている。早くどいて欲しいらしい。
「あーはいはい。ごめんねー。今どくから。ねーねー瑠衣たん。今年一年どうだった?」
「別に何時も通り。納得のいく作品も思考も生み出せてない」
「あ、本当、鏡花は右下まつ毛だけゴン太になって歳を越すよー」
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