俺はこのエロゲーが叡智でエロいことしか知らない
春海たま
第1話 俺はまだこのエロゲーが叡智でエロいことしか知らない
扉を開けるとおっぱいが揺れていた。
ピンクのブラに押さえ込まれながら、はち切れんばかりに揺れていた。
これはD――、
「変態!」
金髪の女の子が俺に向かって叫んだ。
「すみませんでした!」
急いで脱衣所の扉を閉め、玄関に向かう。
何がどうなってるんだ!?
ここは俺の家じゃない、他人の家だ。
玄関から外に出て――ケモミミの可愛い女の子が通り過ぎた。
「なに、これ?」
他にもエルフみたいな長い耳の女の子までいる。
もちろん男性も。
スーツや制服を着て歩いている。
今出てきた家の表札を確認する。
そんな名字は知らない。
だって、俺の名字は――俺は誰だ?
「
さっきの女の子と似た女性が玄関からやって来た。
まずい。
しかし、ここで逃げるわけにはいかない。
見てしまった、覗いてしまった、勝手に入ってしまったのは事実だ。
「すみませんでした!」
もう記憶がないけど、土下座をするしかない。
まさか警察のお世話になるなんて――と優しい香りと柔らかさに包まれた。
「安心して。ここはもう燎雅君の家なんだから。もう怖がらないでいいのよ」
D……E……まだ上がる!? まさかのFカップおっぱいに包まれる。
困惑がまあおっぱい、と思えるくらいの幸福感。
「お騒がせてすみません。燎雅君は私達の家族ですから」
女性が凜々しい声で言って、俺を抱きしめたまま連れ帰った。
◆
真宮家のリビングで、テーブルを挟んで二人と向かい合う。
母親が
俺は錯乱していたと思われているようだ。
俺と両親は事故に巻き込まれ、俺だけが生き残ったから。
親友であった優理さんに引き取られ、今は養子として住まわせてもらっている。
親戚でもない、ということは色々あったんだろう。
優理さん自身も旦那さんを亡くしていると言う。
娘を育てながら、親友の息子まで引き取ってくれるなんて聖人すぎる。
だから、申し訳なくなる。
俺は本当に真宮燎雅なのかと。
ただ現実離れしたおっぱいを目の前にして、一つの仮説がある。
俺は学校の帰りに親友から初回特典付き限定版のエロゲーを貸してもらった。
タイトルは……知らないけど。
エロゲーなので厳重に封印されて渡されたのでパッケージも見ていない。
親友が言っていたのは
とにかく叡智でエロい――それが親友と交わした最期の言葉だった。
俺はこのエロゲーが叡智でエロいことしか知らない。
だからバカげた話だけど、俺はそのエロゲー世界に転生したんじゃないかと。
だってケモミミにエルフがいる説明がつかないし。
ちなみに俺も含めて真宮家は普通の人だ。
「落ち着いたかしら?」
頃合いを見計らい、優理さんが切り出した。
「はい。さっきは騒いでしまってすみませんでした」
「いいのよ。もっと本音を
優理さんは怒るどころか慈愛に満ちた笑みで、おっぱいをテーブルに載せる。
「ありがとうございます」
煩悩を振り払い、俺を睨んでいる金髪ツインテールの少女――莉々亜を見る。
俺と莉々亜は同い年だけど、俺の方が早く生まれたから兄ということだ。
「莉々亜。さっきは本当にごめん」
「え?」
「なんだったらビンタだってしてくれていい」
無許可で生おっぱいを見てしまったのなら、罰を受けるのは当然だ。
莉々亜がジト目になって立ち上がり、俺の側による。
ビンタも俺にとってはご褒美――いや、罰だ。
と、思ったら可愛らしい手で頬をつねられ、
「おおおおお!? ありがとうございます!?」
全身を電流が駆け抜ける。
「莉々亜は超能力者だったのか!?」
「マジでどうしちゃったの」
逆にドン引きされ、手を離された。
「莉々亜、今のはいったい?」
「雷魔法じゃん? え、マジで……大丈夫?」
莉々亜は親指と人差し指を広げ、電気を流して見せた。
ますます俺の仮説に信憑性がついてきたぞ。
「マジで急になんなの。調子狂うな。反省したのなら、次からはちゃんとノックをしてよね。朝にシャワーを浴びるのが日課だから」
「了解」
ふん、とそっぽを向く莉々亜。
これは相当嫌われているみたいだ。
優理さんが手を叩く。
「仲直りね。でも、何か忘れているような……って、朝ご飯! 二人とも遅刻しちゃうわよ!?」
優理さんが立ち上がるのに連動して、おっぱいが激しく揺れ動く。
ブルンバルンと……まさかのノーブラ!?
「ママ、ブラしてないじゃん!」
「あらやだ。ごめんなさい」
優理さんが自分の胸を掴んで確認した。
おっぱいの輪郭がありありと分かるほどに歪み、変幻自在なおっぱい。
つまり、先ほどの抱擁は服一枚ごし。
間違いない、この世界はエロゲーだ。
◆
急いで制服に着替え、朝ご飯を食べ、玄関へ。
「待ってくれ、莉々亜!」
「なに?」
一足先に玄関を出ようとする莉々亜を呼び止める。
「一緒に学校に行かないか?」
「はあ!? なんであんたと一緒に登校しないといけないの! 勘違いされるじゃん!」
やはり嫌われている。
昨日までの記憶が抜け落ちているので、俺に非があったら言い返せない。
だから、今は頭を下げるしかない。
「気持ちは分かるが、今日だけは本当に頼む」
「どうして、そんなにあたしと行きたいの?」
俺の
「それは――」
学校の場所も行き方さえ知らないから、とは言えない。
また心配をかけるだろうし。
「莉々亜と一緒に登校したいからだ」
「ふぇ!?」
顔を真っ赤にする莉々亜の目を見て、堂々と宣言する。
それもまた真実。
可愛い義妹と登校したくないお兄ちゃんがいるだろうか。
いや、いない!
「俺は莉々亜と一緒に登校したい!」
「ま、まあ? そこまで言うのならあたしと……一緒に登校するのを許可してもいいけどね!」
「ありがとう、莉々亜!」
なんだかんだで聞いてくれるのだから、いい子で可愛い妹だ。
これからはいいお兄ちゃんを心がけなければ。
「莉々亜、燎雅君。いってらっしゃい」
優理さんに見送られ、俺の新たな世界が始まろうとしていた。
俺はまだこのエロゲーが叡智でエロいことしか知らない。
◆
俺達が通うのは
校舎の奥にバカ高い塔が建っている。
生徒は魔法を極めるべくダンジョンに潜り、叡智を探求する魔法使いの卵だ。
莉々亜に聞いたら嫌々教えてくれた。
歴史や魔法の詳細は教科書や図書館で調べていこう。
さらに俺の印象を聞いてみたけど。
「無愛想」
その一言だった。
二人と俺の関係はよくなかったみたいだ。
事情を考えれば、分からなくもない。
俺の学年は一年一組、新入生で一ヶ月が経過していた。
「じゃあね」
莉々亜は教室に入ると、友達の方に行ってしまった。
俺も自分の席に……?
「莉々亜、俺の席どこ?」
無言で案内され、椅子をひかれた。
「ありがとう」
そう、と俺にだけ聞ける小声で答え、友達のところに戻っていた。
しかし、と教室を見回す。
誰も俺に声をかけないし、目も合わせない。
クラスの反応も分からなくはなかった。
だって、俺の顔怖いし。
前世の俺だったらお近づきになりたくないタイプの強面だった。
それが無愛想と妹から評されれば、自業自得だ。
今は観察、調査、対策だ。
放課後になり、俺のポジションはなんとなく察しがついた。
序盤でヒロインに手を出して、制裁される悪役あたりだ。
「ちょっとお話しよろしいですか?」
だから、放課後までに目星をつけておいた男子に声をかける。
エロゲー世界ならば存在するであろう、主人公――
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