駅前の都市伝説は、当選金より先に代償をよこした

イミハ

第1話 200円くれたら当ててあげるよ

「200円くれたら当ててあげるよ」


毛布に包まった小汚いおじさんは、私にそう言った。


学校の帰り道、駅前。


改札を出てすぐの、いつも人が溜まる場所。


そのおじさんは、毎日同じ場所で毛布に包まって座り込んでいた。


そして、私がこの道を通るたび、必ず同じ言葉を投げてくる。


「200円くれたら当ててあげるよ」

最初は無視していた。


どう考えても怪しいし、関わらない方がいい存在だと思ったからだ。


でも、それが毎日になると、次第に別の感情が湧いてくる。


――当てるって、何を?


宝くじなのか。


占いなのか。


それとも、ただの変な人なのか。


ある日、その話を学校の友達にした。


「それ、200円おじさんだよ」


「200円おじさん?」


「駅前にいるでしょ。毛布に包まっててさ。200円渡すと、ナンバーズっていう宝くじを代わりに買ってくれて、高額当選したら当選金をくれるっていう都市伝説」


「……怪しすぎない?」


「でしょ。でも、詐欺だって噂もあるし、実際に当たったって話も一応あるらしいよ」


都市伝説。


噂話。


どれも、現実感のない言葉だった。

その日の帰り道。


駅前には、いつも通り200円おじさんがいた。


「200円くれたら当ててあげるよ」

なぜか、その日は足が止まった。


財布の中を確認すると、100円玉が2枚あった。


深く考えないようにして、私はそれを差し出した。


「……必ず当ててね」


「ありがとう。必ず当てるよ」


毛布の隙間から伸びてきた腕は、異様に細く、あざだらけだった。


その腕を見た瞬間、少しだけ後悔した。


次の日。


同じ時間、同じ道を通ったが、駅前に200円おじさんはいなかった。


――やっぱり、騙された。


そう思いながら、ふと足元を見ると、

おじさんが座っていた場所に、1枚の紙が落ちていた。


ナンバーズの購入券。


私はそれを拾い、家に帰ってから当選番号を調べた。


結果は、外れ。


「……嘘つき」


小さく呟いて、購入券をゴミ箱に捨てた。


それから、帰り道で200円おじさんを見ることはなかった。


ただ、その日から、少しずつおかしなことが起き始めた。


信号は、必ず青になる。


満員電車でも、なぜか座れる。


小テストの山勘が、全部当たる。


偶然だと思おうとした。


気のせいだと、何度も言い聞かせた。

でも、あまりにも外れない。


ある夜、ふと気になって、ゴミ箱を覗いた。


捨てたはずのナンバーズの購入券が、

なぜか、机の上に置かれていた。


日付を見る。


それは、

私が200円を渡した日ではなかった。


私が、この駅を通り始めるよりも、

ずっと前の日付だった。


その瞬間、あのおじさんの言葉が頭に浮かんだ。


「200円くれたら当ててあげるよ」

――何を、とは言っていなかった。


その日から私は、

「外れる」という感覚を、思い出せなくなった。

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