『アンチェイン・ハコモノ 〜聖域の扉を開く者〜』

春秋花壇

『アンチェイン・ハコモノ 〜聖域の扉を開く者〜』

『アンチェイン・ハコモノ 〜聖域の扉を開く者〜』


重い鉄の扉の向こう側 「変わりたい」と願う魂が、今日も列をなしている けれど彼らの前に立ちはだかるのは 幾千の羊皮紙と、淀んだインクの匂い


「ここに署名を」「あちらに印を」 事務官の冷たい声が、情熱を削り取っていく 魔法を使えるはずのその指が ただ、無意味な契約の鎖に縛り付けられていた


解き放て、その重すぎる鍵(ルーチン)を 書き換えろ、停滞という名の古い魔導式を 聖域(ハコ)は、人を閉じ込める場所じゃない 新しい自分へと、羽ばたくための滑走路だ


男は静かに、光のペンを取る 彼が紡ぐのは、火球を放つ呪文ではない 淀みを消し、摩擦をゼロにする 「構造」という名の、透明な美しき旋律


「機械に心を任せるのではない」 男の瞳に宿る、静かな熱が語りかける 「作業を機械へ返すのは、  人間にしかできない『温もり』を、取り戻すためだ」


ハコの中に、魂(モノ)が満ちていく 受付の喧騒は消え、代わりに聞こえるのは 己を鍛える息遣いと、高鳴る鼓動 お箸を並べて、一膳の幸福を分かち合うように 彼は世界中の扉を、指先ひとつで開いていく


見上げてごらん、街に溢れる無数の光(ハコ)を そこではもう、誰も鎖に繋がれてはいない 滑らかな導線の先に、健やかな明日が待っている 扉の向こう側―― そこは、あなたが自由になれる、最初の場所


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