資料6:事故現場より回収されたICレコーダー
ファイル名: REC_004.mp3 録音日時: 202X年10月12日 02:15 場所: 鞍見坂工区 No.9082電柱上部(推定)
概要: 失踪当日、弦田主任が無断で現場に立ち入り、電柱に昇った際に記録されたものと思われる。警察より証拠品として還付された。
【再生開始】
弦田の声: 「(激しい息切れ)……確認する。目視確認だ。センサーの数値が狂っているなら、自分の目で見るしかない。そうだろ?」
風音: (轟音。しかし、周囲の樹木が揺れる音はしない。マイクだけが風を拾っている)
弦田の声: 「碍子に……何もついていない。テープなんてない。……いや、あるか? 黒い……羽根? (笑い声) ああ、そうか。ここは高いな。333メートル、いや、もっと高い。 丹波の言った通りだ。混線している。 俺の声は、まだ俺の言葉か?」
不明な声(ノイズ混じり): 『————下を見るな』
弦田の声: 「え?」
不明な声: 『————上を見るな』
弦田の声: 「(泣き笑いのような声で)……じゃあ、どこを見ればいいんだ。 俺はずっと、この高さを求めていたんだろ? あの事故の時から。 重力なんて、ただのバグだ」
効果音: (バチッという電気的なスパーク音。続いて、肉体が濡れた雑巾のように叩きつけられる音ではなく、風船が空へ吸い込まれていくような、ヒュン、という音が遠ざかる)
【再生終了】
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