一見、現代社会の希薄な人間関係を象徴する様なある種虚しさを感じさせるが

「誕生日に見知らぬ誰かと繋がりませんか?」
この小説のテーマである『バースデー・コネクト』というサービスは、一見すると現代社会の希薄な人間関係を象徴するような、ある種の「虚しさ」を感じさせる設定です。しかし、読み進めるうちにその印象は大きく変わりました。
身近な人だからこそ言えない弱音や、期待してしまう見返り。そういったしがらみから解放された「他人」だからこそ、無条件に相手を祝福できるという逆説的な真実にハッとさせられます。
主人公が受け取ったのは、単なるデータではなく「誰かが自分のために時間を使ってくれた」という事実。その温もりが、彼女を再生させ、次は彼女自身が誰かを照らす側になる。
孤独を埋めるためのツールが、いつしか希望へと変わる過程が見事で、読後感はとても爽やかでした。