『ハイネルト・クロニクルズ』は、英雄が魔族を討ち、名を残すような華やかな冒険譚とは少し違います。
描かれているのは、仲間が去り、時が流れ、役割が変わっていく中で、それでも「自分の立つ場所から目を逸らさなかった」一人の人物の歩みです。
主人公セラは、剣を振るう立場から、街を支える立場へと移っていきます。
それは後退でも敗北でもなく、ただ現実と向き合った結果の選択でした。
誰かが去ることを責めず、誰かが輝くことを妬まず、それでも残ることを選ぶ——その姿勢が、この物語全体を貫いています。
本作の印象的な点は、「英雄がいなくなった後の世界」を丁寧に描いているところです。
鐘が鳴り、街が動き、人々が暮らしを続ける。その当たり前を守ることが、どれほど重く、尊いことなのかが静かに伝わってきます。
派手な逆転や劇的な称賛はありません。
ですが読み進めるほどに、誠実であることを選び続ける強さが、確かに胸に残ります。
英雄譚の陰にある物語が好きな方、
「残る」という選択に意味を見出したい方に、ぜひ読んでほしい一作です。
故郷を守りたいという心に忠実である限り、大丈夫、闘える。