魔法の言葉

ひのき

魔法の言葉

 ほんの10年前くらいだろうか。

 私はとあるオンラインゲームにハマっていた。

 不登校だった私は、起きている時は昼間から、夜中であれば、一日中その世界に浸っていたと思う。

 

 そこで出会ったのが『かおる』というプレイヤーだ。

 

 彼女、いや彼かもしれないけれど、その人遊んでいる内に、昼間からずっとログインしている私をかおるさんは疑問視するようになった。


 私は、全てではないけれど、たぶん不登校である事を打ち明けたのだろう。

 その人に何か悩みがあれば言ってほしいと言われた記憶が残っている。

 私はただただ「大丈夫」とだけ返すと、かおるさんは「大丈夫が一番心配」なのだと、そう言った。

 見透かされたようで、悔しくて。

 私は泣いた。

 それでもチャット上は大丈夫と言い続け、それから数週間後、そのゲームにおける人間関係を全て断ってしまった。

 これは今でもたまに起こる、人間関係リセット症候群というやつだ。

 たぶん、当時は何かすごく面倒な事があったんだと思う。

 そこでまたゲームをしていたら、かおるさんと再会できた。

 でもかおるさんに言われた言葉は「もう、こんな思いしたくない」だった。

 私は取り返しのつかないことをしてしまったのだと、その時になって初めて気づいた。

 

 その日以降、私はかおるさんとは会えていない。

 10年経った今、そのオンラインゲームもやらなくなり、私は色々な人に迷惑をかけながら大人になった。

 

 それでも、毎日かおるさんのことを忘れた日はない。

 毎日、毎日、自分に大丈夫と言い聞かせ、返ってこない言葉を待っている。

 たぶん、この思い出は忘れた方が楽に生きられるのだろう。

 胸が締め付けられる度に、忘れたいと何度も自分を責める。

 

 でも、そうだね。

 もし、かおるさんに再会できたのなら。

 今度こそ、助けて。と、言えると思う。

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魔法の言葉 ひのき @Hinoki0114

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