第12話 スラム街
※第一大陸旧地図をリンクしました。
物語の進捗に合わせて参照下さい。
https://kakuyomu.jp/users/gyoku2509/news/822139842313601503
首都北門から西側に少し進んだ都壁沿いに
伸びるスラム街。 どこの国にも必ずと言っ
ていい程存在する、貧民・難民の街。 昔は
東西南北、首都を囲む様にスラムのテント街
が有ったが、景観上・保安上の観点から、北
門西側に集約された。 広大なスラム街に成
っている。
玉が入口に達すると、何かが視界を
た。 正体の分からぬ液体が
ラムテント目掛けて落ちている。 瞬間、玉
の念が飛んだ。
(元へ戻れ!)
都壁歩廊にいた衛兵二人組の片割れが持っ
ていたカップに戻った。
「おい、先程捨てた
たぞ。 ・・・、魔法使いの仕業だな。」
「舐められるのも、癪だな。」
相方が、足元に転がる拳大の石片を拾い、
下に投げつけた。
(元へ戻れ!)
再び玉が念ずる。
同時にスラム街全体を覆う様に、対物理結
界と魔法無効化結界を張った。
石が衛兵に向かって飛んで行き、
たった。 気を失った相方を抱え、詰所に
戻った片割れが、仲間を引き連れてスラム入
口にやって来た。
玉は、入口で待っていた。
「スラム街の住人に告ぐ。 直ちに魔法使
いを差し出せ。 都を守る兵に盾突く魔法使
いだ。」
ワインを捨てた衛兵が怒鳴る。
「そんなに怒鳴らなくても良い。 魔法使
いでは無いが、此処に居るぞ。 俺の名前を
憶えて置け、薬草採りの玉だ。 お前らの用
件を言え。 聞いてやる。」
「貴様、俺達に盾突く気だな。 俺達に逆
らうという事は、国に逆らう事だぞ。」
「国だか何だか知らんが、どっちが悪く
て、危ない事をしたのかな。」
「逆らう者は、この場で切り捨てる。」
「ほう、闘るのだね。 後悔するなよ。」
「何おう!」
体格の良い五人の兵士が玉を取り囲み、ワ
インの兵士が切り掛かる。
切り落とす玉。 すかさず、他の四人の手足
を切り落とし、腹部を貫き、死に至らない程
度の重傷を負わせる。 失血性ショックと痛
みでのたうち回る五人の兵士。
(ハイヒール!)
光が舞い降り、欠損・負傷部位は修復さ
れ、痛みも治まった。
血で汚れた地面も綺麗に戻り、何事も無
かったかの様だ。
だが、切られた時の痛みは、脳に記憶され
たまま消え去りはしなかった。
玉が残したのだ。
「さあ、傷も治った事だし、二回戦と行こ
うか。」
構える玉に対し、残された痛みの記憶が恐
怖に変わった兵士たちは
り。
「どうした、来ないのか? 終わりか?
先程の一件は、どちらが悪いのか明白だと思
うが、詫びの一つでも入れるのなら水に流す
ぞ。 どうする。」
隊長らしき兵士が進み出て謝罪した。
「適う相手では無いのが良く分かった。
上の歩廊から物を投げ捨てた自分達が悪か
った。 申し訳無かった。」
「謝罪を受け入れよう。 詰所に戻ったら
他の兵士にも言っておけ。 都壁歩廊から下
には物を投げ捨てるな!とな。 分かったな
ら、行け。」
入口付近にスラムの住人が集まっている。
五十歳くらいの男が一人進み出て玉に伝え
た。
「スラム住人のサンザと申します。 あっ
と言う間の出来事。 すぐにスラム中に伝わ
るでしょう。 薬草採りの玉殿、取り
長老達が待って居ります。 ご足労願えます
かな。」
「ちょっと待って下さい。 念の為、策を
施して置きますので。」
(クレア王国の大賢者よ。 聞こえます
か。 “真の森”薬草採りの玉と申します。
突然の念話ですが、申し訳有りません。)
自宅にて書物に目を通していた賢者ネルソ
ンの意識に何かが触れる感覚がした。 感じ
たものを噛み砕き、ゆっくり飲み干す様に、
落ち着いて対応した。
(“真の森”薬草採りの玉殿。私に念話が
出来るのか分かりませんが、取敢えず念じま
す。)
(ネルソン殿、伝念しております。 ご対
応有難う御座います。)
(して、用件の程は。)
(実は、貴国の首都北門を入ろうとした
際、衛兵が都壁下のスラム街へ、歩廊からワ
インや石片を投げ落とす現場に遭遇したので
る事を認め・謝罪を貰ったのですが、住民へ
の報復が懸念されます。 賢者殿から釘を刺
して頂ければ幸いと思い、念話しました。)
(玉殿、スラム街住人と言へども、国に住
む民の内。 係る揉め事の連絡と住民を案じ
ての願い、聞き入れました。 早急に手を廻
します。 玉殿、もし、宜しければ直接お会
いして話がしたいものです。 今から都に入
られるのならば拙宅にも立ち寄り下さい。
お待ちして居ります。)
(ネルソン殿、丁寧な対応、感謝します。
スラム住民への本事例の説明・注意事項・
周知が済み次第、伺います。その節は宜しく
願います。)
(玉殿、了解しました。)
すぐさま近衛兵軍首都警備隊長宛に書状を
認め、執事に持たせた。
サンザと共にスラム街中央に位置する、一
際大きなテントに入る。
(他国のスラム街に比べ街並みが大きい
な。 それに、整然としている。
に、目に見えぬ規律らしきものを根底に感じ
る。 統治している長老達の背筋がピンと伸
びている様だな。)
テント入口で、サンザが番人と目礼を交わ
し、玉同伴で入幕する。 中では、獣人族・
龍人族・魔人族・人族の長老四人が円卓を囲
んでいた。
「薬草採りの玉殿をご案内致しました。」
三十人位入れるテントを三つ付け合わせた
ような造りをしている。
「薬草採りの玉殿、ご足労頂き感謝する。
獣人族長老のゴルガです。」
「龍人族のロンレンです。」
「魔人族のディスティよ。」
「人族のスナフです。」
四人を見渡し、応答する。
「“真の森”薬草採りの玉です。 大陸共
通語でつうじますか。」
「“真の森”の方ですか。 これは、これ
は。 共通語、
ロンレンが感心すると他の三人も頷いた。
「先程の揉め事、速やかに解決して頂きス
ラム街住民一同、感謝致します。 スラム全
体に結界を張ったようなので、皆で感激した
ところです。 ところで玉殿、キルレオ王国
へは、目的が有って参られたのですか?」
ロンレンの問いに、恥ずかしそうに玉が答
えた。
「実は、嫁捜しの旅なのですよ。 里のお
袋様に、「孫の顔が見たい。 嫁が見付かる
までは帰って来るな!」と、言われまして。」
スナフが微笑ましそうに入った。
「
内に、見せて御上げなさいな。 親孝行です
よ、それも。」
「こればかりは、相手も有る事で、中々思
う様には行かなくて、・・・。」
照れる玉の様子に、長老達が笑う。
「暫くこの国に留まるのなら、これを機会
に何時でも遊びに来て下さい、玉殿。」
「はい、お言葉に甘えて、そうさせて頂き
ます。 この国の賢者ネルソン殿にスラム街
に手を出さぬ様、近衛軍首都警備隊に釘を刺
して欲しいと願い出たので、暫くは結界と併
せて安全かと思います。 結界に関して、住
民の出入りに支障は有りません。 兵士その
他の者が悪意を持って押し入ろうとした場合
には、
後、ネルソン殿にお礼を述べに参りますの
で、今日はこの辺で失礼します。 ご挨拶が
出来て良かったです。」
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