A県山間部で起きた男性の不審死事件について

南野星

第一発見者、島田史彦の調書記録

 八月某日、A県のとある山間部にて一人の男性の遺体が発見される。発見当時既に男性は死後二週間が経過しており、ひどく腐敗が進んでいた。第一発見者はその山で猟師をしている島田史彦しまだふみひこさん六十八歳。以下、史彦さんに行った調書の音声記録である。


『……えー、改めてお名前をお願いします』

『はい、島田史彦と申します』

『島田さん、あなたがご遺体を発見されたときの状況を教えてください』

『森ン中を歩いとったら何だか変な臭いがしてきましてねェ、熊が鹿でも食ったんかと思ってねェ臭いを追いかけてったら見つけたんですよ。木の上に……』

(史彦が何度か咳き込む)

『ゆっくりで大丈夫ですよ、お水もこちらにありますので、ご自由にお飲みいただいてかまいません』

(史彦が喉を鳴らして水を飲む)

『すみませんねェ、あれから体調があまりよくなくてねェ。それで木の上のご遺体を発見したんですが、あそこは登山道とも離れているし格好も変で、遭難者には見えませんでしたねェ』

『なるほど。では、山中に変わった様子はありませんでしたか?』

『そうですねェ、森がやけに静かで、どこか違和感がありましてねェ』

『違和感、というのは?』

『いやァ、違和感と言うのもまた違うのですがねェ、猟師の勘とでも言いましょうか、何かの気配がしたんですよ』

『何かがいたということでしょうか?』

『オレの目には見えなかったんだけどもねェ、コタロウ……あァ、ウチの犬っころが、何かを見つめたまま急に動かなくなっちまってねェ。普段は熊にもビビんねェ、オレの相棒って感じなんだがねェ』

『なるほど、他には何か……』

(データの破損により雑音が流れる)

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