第12話 初めての戦闘の実績を解除しました
「……あんなもんが熊で有ってたまるか!」
現れたのは、四足歩行の大きな黒い塊、体表に毛は生えていないが絶えずウネッている。そして眼窩は底知れぬ深い闇となっており、矛盾するかのように赤い光が灯っている。
「ガルド!お願い!!ユーマは下がってて!」
「任せろ!!」
ガルドが土を巻き上げ地表を抉り足跡を残す。悠真は死の恐怖を感じていた、理性を押し退け湧き上がる本能。
(やばい……俺になにか出来ることは)
グルグルと考えが巡るが、今までの経験では対処法が見つからない。
(ええ!!都合良く奇跡よ起きろ!!神よ!!)
意を決して悠真は叫んだ。
「ステータス!オープン!!」
期待に反してというか、むしろ予想通りというか、特に何も起きない。セリアが怪訝な表情でコチラをチラリと伺ったくらいだ。
ガルドは相変わらず斧を振るって敵の攻撃をしのいでいる……しかし決定打は出せない。セリアは集中するように目を閉じ、何か呟いている。
「逃げ場は形を持たず……水は、それを満たす。我は包囲に在り、汝の動きは奪われる」
(呪文だと!?)
「——縛れデリュージ!!」
刹那、地中から水が湧き上がり三体の敵それぞれに纏わりつく、たかが水のようだが明確に動きが鈍っていく。
「よくやったセリア!!」
「でもそう長くは持たないわよ!!」
「十分だ!!」
ガルドが後ろに跳躍し、斧を構え唱えだす。
「消えぬ火は怒りではなく、忘却すら許されず。我は記憶に在り……汝は、燃え続ける——宿れ!ラスフレア!!」
ガルドの持っている斧が赤熱し、熱せられた空気が揺らぎチリチリと悲鳴を上げた。
「喰らえ!!」
力任せに振るわれた斧は、次々と敵を解体していく、細切れにされた部位から塵になり砕けて消える。全てが終わるとまた、風と木々の葉の囁きが戻ってきた。
「はぁー、疲れた。まさかこんなところに出てくるとはね……」
「早く見つけられて良かったじゃないか、おかげで駆除ができた。ところでセリア……大丈夫か?」
「無理ね……あの数相手を拘束したんだもの、正直もう限界よ」
言うやいなや、セリアはゆっくり片膝を付いた。息が上がっているわけでは無いが表情には極度の疲労の色が見える。
「もーアタシ何もできないわ、手も足も出ないって感じ」
「よし!一旦帰るとするか!!」
ガルドが豪快に言い、セリアを軽々と肩に担ぎ上げた。
「おぉい……まるで荷物みたいに運ぶじゃ無いか、良いのか?女の子だぞ?」
「何故だ?早くて楽だぞ?」
「ユーマ……アンタって変なところに拘るのね……」
どうにも釈然としないが、本人が気にしないのなら良いかと気を取り直し、悠真は後を追っていった。
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