種付け奴隷剣闘士として売られた僕が貞操逆転世界で地位を得るには

恋狸

第1話 種付け奴隷剣闘士の爆誕

「今日からお前は──種付け奴隷剣闘士だ」


「なんて?」


 僕は売られた。

 異世界転移してから僅か十分の出来事だった。


 というより目が覚めたらもうすでに売却済みだった……というか。

 何やら僕は一週間ほど意識を失っていたらしく、旅する奴隷商が立ちションをするため森に立ち寄った際にフルチンの僕を発見したらしい。


「私が世にも珍しい男の奴隷商で良かったな、本当に、いやマジで。正直無断で売っぱらったのは若干申し訳ないけど、これは保護と言っても差し支えないないと思うんよね」


 とか何とか云々かんぬん言ってたけど、異世界っぽいところに来てしまったのは何とか理解したから、僕は記憶喪失のフリをしてこの世界について奴隷商のおじさんに聞いた。



「──貞操逆転世界ってやつか」


 どうやらこの世界は男女比1:100の貞操逆転世界──男女の価値観とか性欲だとかが逆転してる世界らしくて、僕はそんな世界で種付け奴隷剣闘士としてコロシアムに売られたらしい。


 いやなんて?


「種付け奴隷剣闘士ってなんですか?」


「これから行く街にはな、世界最大規模の娼館闘技場──ヌルシアムがある」


「なんて?」


 ぬ、ヌルシアム……?

 コロシアムではなく?

 殺伐してるイメージから一瞬でパロディAVみたいな雑コラ感になっちゃったじゃないか。


「そこでは毎週、種付け奴隷剣闘士と女剣闘士の一対一のバトルが行われているんだが……種付け奴隷剣闘士が負けてしまった場合、その場で女剣闘士にエロいことをされる」

「なるほど」


 僕は悪くないじゃないか、と思った。 

 童貞歴17年。エロいことに並々ならぬ興味と希望を持っている僕にとって、女の子にムフフなことをされるというのはむしろご褒美だ。

 

 ……ハッ! そうか、ここは貞操逆転世界!

 一般男性にとって無理やり女性にエロいことをされるというのは拷問にも等しい行為!!!


「で、三回連続で負けたら処刑される」

「あかんやん」

「可愛い男の子の処刑シーン、って貴族とかに結構人気でな……あいつら本当に業が深い性癖してやがる……」


 エロティックファンタジーにGが付きましたよ。

 僕が求めてるのはR18であってR18Gではないんですよ。


「まあもっとも、三回負ける前に大体は貴族とか金持ちの商人に身請けされて剣闘士を卒業できるから、腕っぷしに自信がなくてもそう悲観することはない」

「ほうほう、貴族のご令嬢の奴隷になるのは結構良いことなのでは?」

「ご令嬢? はは、の間違いじゃないか。身請けするほど財産的余裕のある人間は大体は高齢の貴族か商人さ」


 終わったンゴ。

 可愛い貴族令嬢に飼われるならそれはそれでアリかもしれないよね、って考えた浅はかな僕を誰か殺してくれ。

 

 その前に僕は、貞操逆転世界に来たからにはハーレムを作りたい。そして自由が欲しい。

 聞く限り可愛い子に身請けされたとしてもハーレムなんて許してくれるわけがないし、飽きたらポイッてされるか殺されるかに違いない。


 ……ぼ、僕はこの世界で地位を得る必要がある。


 意を決して僕は奴隷商のおじさんに聞いた。

 

「身請けされずに奴隷を抜け出す方法は無いんですか」

「ん? そりゃ試合に勝って報奨金を貰うことだな。自分で自分を身請けすりゃ晴れて自由の身だ」

「この世界で女性を囲ってる男性とかっていたりしないんですか?」

「そんな物好きはあんまり見たことねぇが……そうだな、後ろ盾が欲しいって理由で女を囲ってる冒険者なら見たことある」


 冒険者──!!!

 そうか、自由と言えば冒険者!!!


 丁度良いじゃないか。

 剣闘士で戦いの経験を積んで、勝ち続けて冒険者になった後にハーレムを作る!!


 これで僕の未来は明るいぜ!!


 きっと異世界転移したからには何らかのチートとか与えられてるだろうしね。


 

☆☆☆



『ヌルシアム第一回戦は──期待の超新星! 黒髪黒目の虚弱ショタ──ユウタ・ハイバラだぁぁああ!!!』


 僕はめちゃくちゃ死んだ目で歓声の上がるコロシアム……じゃなくてヌルシアムの真ん中に立つ。

 申し訳程度に腕を上げてやる気をあらわにすると、少しばかりの沈黙の後で「「「うおおおお!!」」」という黄色い歓声が僕を歓迎した。


『対するはァ!! ヌルシアム最強とも名高い亜人族のエリートぉぉ!! ──フィルナ・センテルスぅうう!!!』


 僕は対戦相手を見て絶句した。


 身長2m50cm。

 腹筋はバキバキで頭に二本の角が生えている。

 腕や足に少しばかり鱗が生えている以外は、普通の人間と遜色ない。


 ただその体躯が異常だ。

 デカい。とにかくデカい。


 身長が高い、デカい。

 おっぱいがデカい。窒息できる。

 太ももが太い。ムチムチしてる。

 

 赤髪ポニーテールでツリ目。

 頬にはバツ印の傷があって勇ましい。

 しかし、その容姿は非常に優れていて、カワイイというよりはカッコいい側の容貌ではあるものの、僕にとっては全然守備範囲である。


 ──問題はさ。


「どうやって勝て言うねんマジで」


 あと負けてエロいことをされてる時、ワンチャン僕は死ぬ可能性がある。

 何やら興奮するあまり、力の加減が効かない亜人族が種付け奴隷剣闘士をことがあるらしく、やかましい解説者の言う通り虚弱ショタである僕は詰んでいる。


 オモチャじゃないんねんぞ。


『さぁ!! 今回の種目はです!! どちらが勝つのでしょうか!!!』


 なんて???

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