10 駄目らしい

小さい頃に出会った光輝は、それこそ魔王に忠誠を誓いし不死の騎士団長<ザイン>に似ていたわけだが、それがどんどんと変わっていき、とうとう光り輝く勇者へと変貌してしまった。

だから、それこそそのゲームの中の様に、自分に合う友達やヒロインを見つけて付き合っていけばいいと思っている。

……寂しいけど。


「……うぅ〜…………。」


悶々……モヤモヤ〜!

なんとなく嫌な感じの想いを抱きながら、ベッドの上をコロコロと転がっていると、そのまま固い何かにぶつかった。


「……何転がってんの?」


「あ、光輝。」


固いモノの正体は光輝だった様だ。

転がる進行方向にいた光輝にぶつかって止まる俺を、覗き揉む様に光輝が顔を近づけてくる。

その顔面は恐ろしい程整っていて……昔「行け!ゾンビ〜!」とか言って、おんぶしてもらいながら猫じゃらしで叩いた事を悔やんだ。


「……ごめんなさい…………。」


「??何に謝ってるの?まぁ、何でも許すからいいよ。それより、影太、約束。」


光輝はアッサリ俺を許すと、そのまま手に持っていた耳かきを渡してくる。

それを受けとり、ゆっくり起き上がってベッドの端に座ると、光輝はご機嫌で俺の膝に頭を乗せて耳を見せてきた。


「…………。」


俺はそのまま条件反射の様に耳をほじってやりながら、膝に乗っている女子顔負けのサラサラヘアーを撫でる。


「明日の試合って、午前中だけ?」


「うん、そうだよ。だから終わったら直ぐに帰ろう。」


明日の試合の予定を聞きながら、また心はズンズンと急降下していった。


バスケ部は、殆ど光輝のファンクラブだと思って良い程、とにかく光輝大好きな集団と化している。

そのため、そんな大ちゅきな光輝にくっついて顔を見せる俺は……当然、めちゃくちゃ嫌われているというわけだ。


「……なぁ、これからも部活の試合とか練習見に行かないと駄目か?」


正直、針の筵の様な場所に行くより、気が合う中野や部活のメンバー達と遊びに行ったり、一人でゲームのストーリーを考えたりしたい。

そう思っているのだが、光輝が「絶対来て!」というから、今まで仕方なく全部行っている。

今までは、『そんなに言うなら、まっいっか!』と付き合ってきたが、高校生になれば、それぞれに合った世界は広がっていくわけで……。


別に全部一緒に!をしなくてもいいと、常々思っていた。


他の人と遊んだって、多少離れたって、光輝との友情は変わらないし……もし気が合うなら、中野とか俺の部活のメンバーとかクラスメイトとかとも一緒に遊びに行ったり仲良くしたりしてもいい。


どうせなら皆でした方が楽しいしな、ゲームは。


競い合うゲームなんかは、沢山参加者がいた方が面白いモノが沢山あるし、誰が一番とか難しい事は考えず、皆でワイワイ楽しめばいいと思っていた。


「その間、俺は別の所で遊んでるから、終わって時間が合いそうだったら、会って飯なり遊びなりすればよくないか?

もし、光輝の部活の皆で遊ぶ事になったら、その時連絡くれれば俺は帰るから────……。」


「……は?」


冷え冷えする空気を感じ、頭を撫でていた手を止めると……横を向いていた光輝の顔が俺の方へ向くと、その顔は大激怒!

めちゃくちゃ怒っている!


「あ、あれ……?」


「なんで影太と別れて過ごさないといけないの?……だったら、部活なんて今直ぐ辞める。

そもそもこんな死ぬほど辛い事、やりたくなかったっ!!」


大激怒、大噴火で怒り出す光輝に、俺は焦る。

確かに運動部は、総じてキツイ!辛い!しんどい!だから、それを頑張っている自分を拒絶されたと思われてしまったらしい。

自分の失態を振り返り、心の中で頭を抱えた。


そりゃ〜こんなに辛い練習に耐え、更に緊張感に溢れた試合を前に、その最中遊んでいるね!と言われたら、気分が悪いか……。


「ごめん、俺、ちょっと無神経だった。明日は、ちゃんと一緒に行くから、試合頑張ってくれよ。」


怒っている光輝の顔をまた横に向けると、そのままヨチチ〜!と頭を撫でてあげる。

そしてそのまま何か物申そうとしている光輝の耳に耳かきのフワフワをツッコミ優しく動かすと、とりあえずは心穏やかになった様だ。

黙ってウトウトしだしたから。


そのままぺったりくっついてくる光輝の耳かきを終え、そのまま光輝のデカい体をコロコロと転がしてベッドの中央まで移動させると、その隣に寝っ転がって布団を掛ける。

それを見計らった様に、光輝に抱きしめられて、そのまま二人で寝てしまった。

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