第5話 『 コグレ 』
カイはその素っ気無さとは裏腹に、妙に一部の猫から人気があった。その中でも群を抜いてカイに懐いていたのは、おそらくカイの親戚筋に当たる子猫「コグレ」だったろう(やはりその身体は灰色=グレーだった)。コグレは家の縁側の下でカイをずっと待ち構えていて、カイが顔を出し颯爽とお出かけすると、殊勝にもその後ろをチョロチョロ付いて回るのだ。まるで弟子か、舎弟のように。そして時には僕らの目を盗んでカイの後ろから家に忍び込み、オジキの残したエサを残さず頂戴して帰るのだ。
「コラツ」
と僕らはその都度叱るのだが、そうするとコグレは疾風の如き速さで姿をくらます。その時の「見つかった!」と云う時の顔。そして庭先でカイが現れるのをじっと待つ姿は何とも愛らしく、そして時に不憫だった。
ある時そのコグレが僕らの知らない間に家に入り込み、外出する僕らに意図せず閉じ込められたことがあった。何も知らない僕らが帰宅すると、思いがけず風呂のフタの上で温もっていたコグレはこれ以上ないくらいに慌てふためき、退路を探して家の中をしばらく走り回っていた。
そんなに慌てなくも良いのに…。
僕らはカイの哀れなしもべにそう語りかけたかったが、当のカイは全く我関せずの態で、僕らから新しいカリカリ餌をもらうと一心にガッつくばかり。可愛い舎弟への気遣いはこれっぽっちもなかった。
考え直せ。こんな自己チューのオジキのどこが良いんだよ、コグレ?
僕がそう言いかけた時、さすがにコグレは既にどこぞへと姿を消した後だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます