人間なんか助けない
@hamanasu361
第1話
これで、嫌なこととは、さよなら出来る。
学校の屋上で、突き飛ばされて、壊れていたフェンスが外れて、落ちた。
ぼくをいじめていた奴らが、驚いた顔をしている。
これで、学校とも家ともおさらばだ。
そう、思っていたのに、なんだろう?
目の前に、凄い綺麗な男の人がいる。金色の髪に青い瞳の綺麗な人。
こんな綺麗な人、始めて見る。死んで見るのがこの顔なら、いいかもしれない。
「こんにちは、突然ですがあなたには、他の世界に行ってもらうことになりました」
何を言っているのだろう。
「え、嫌です」
「え?何でですか?」
「だって、そこで世界を救ってくれとか、言うつもりでしょう。人間なんか、助けたくない」
「わかっているのに、断るのですか?」
「そうだけど?」
「理由をうかがっても…?」
「だって、誰もぼくを助けてくれなかった」
学校で、毎日いじめられていた。
殴られて、蹴られて、陰口を言われ笑われて、火のついたタバコを背中に押しつけられたりもした。
助けて欲しくて、先生や親に行っても、面倒臭いと言いたげな顔で、無視された。
あの時だって、あいつらに服を脱がされそうになって、逃げたのだ。
動画にあげるのだと、笑っていた。
お前は、顔はいいから、きっと高く売れると。
「あんな嫌な思いをしたのに、人間なんか助けたくない。そんなことするくらいなら、消滅したほうがましだ」
それは、そうだろう。
人間にひどい目に合わされたのに、助けようなんて、しないだろう。
もし、いたら、私はそいつを信用出来ない。
勝手に記憶を見てしまって申し訳ないが、この子供に人類を助けてくれなんて言えなくなってしまった。
子供に無関心な親、無責任な教師、他人に暴力を振るって何も感じない子供。
あの時、逃げなかったら、この子供はあの子らに犯される所を動画にとられていた。
「怖かっただろう」
抱きしめると、ビクリとして、静かに泣いた。こんな、傷ついている子供には、これ以上苦労して欲しくない。
このまま、私がもらうのも、いいかもしれない。
「怖かった。誰も助けてくれなかった。逃げる場所もなかった。
ぼくは、どうしたら良かったのかな…」
「それは、私にもわからないけど…」
涙をぬぐってあげて、顔を上げさせる。黒い瞳が美しい。
「世界を助けろなんて、言わない。ここで、私と暮らそう」
「いいの?」
「世界を助けるのは、他の人に頼むよ。これから、私が、君を幸せにする。
とりあえず、ケガを治そうか。君、名前は?」
「まことです」
抱っこされて、姫抱っこされて、連れて行かれた先は、大きな神殿のような場所だった。
天井の見えない建物なんて、始めて見ました。
たまに、顔の見えない人とすれ違う。
皆、白いゆったりした服を着ている。
大きな扉を開けると、そこには、大きなベッドがあった。
その奥に扉があって、その先は浴場で、そのまま湯船に入る。
「服のままでいいの?」
「いいよ。私がいいと思ったんだから」
びっくりしていると、服を脱がされて、身体を洗われた。
今、何も着てない。
「隠さないで」
腕をつかまれて、全身をみられた。やけどの跡とか、アザだらけで汚いのに……。
それから、風呂から出て、身体を拭かれてベッドに寝かされる。
嫌な気持ちより、汚い身体を見られるのが恥ずかしい。
「見ても、綺麗じゃない」
「気になる?」
「だって、あなたは、綺麗だもん」
「…なら、治そう」
鎖骨のあたりに口づけされた。
「…あ」
変な声がでた。
「あ、あの…」
この綺麗な人が、汚いケガの跡を舐めている。その度に、全身が痺れたような感じがして、身体が勝手に反応する。
「直接こうした方が、早く治るし、気持ちいいだろう?私も楽しいし」
「へ…?でも、あの…こういうのは、好きな人とするものでしょ?」
「なら問題ない。私は既に君が好きだから、全部調べても、問題ないよね」
全部調べるとか、恥ずかしいこと言われた。
「ひっ…だ、駄目…」
背中の跡を舐められた。
タバコを押しつけられた場所だった。
「や…やめ、んっ…」
「ディディエラ。私の名前」
呼んでくれと、優しくささやいた。
「まこと、呼んで」
「…ディディエラ様」
「いい子だ…」
耳を軽く噛まれて、ゾクゾクする。
「や…やぁ!!」
それから、何をされていたのか、よくおぼえてない、優しく触れられて、自分の中をさぐられた気がする。
恥ずかしいことを、たくさんされているのに、嫌ではなくて、苦しいのに、気持ち良くて、おかしくなっていく。
気づいたら、ベッドに寝かされていて、ディディエラ様に、頭を撫でられていた。
「ディディエラ様は、神様なの?」
ぼんやりしたまま、尋ねた。
「ん?そうだよ。5の世界の神様の一人だね」
「ぼく、本当に世界を助けなくていいの?」
「いいよ。それは、他の人に頼むから」
そう言って、キスをしてきた。
「まことは、誰かを助けたいの?」
「やだ。助けたくない」
そうだよね。あんなことされて、助けようなんて、思わないよね。
私が、まことと同じ立場なら、断わるだろうな。
「…まことの仕事は、私に愛されることだよ」
良かった。
誰も、助けなくていい……。
「まこと、今は、ゆっくりお休み」
「うん。おやすみなさい」
ぼくは、誰も助けない。
助けなくていい……。
良かった。
人間なんか助けない @hamanasu361
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