惰性恋愛の終わらせ方|恋愛
岡山みこと
惰性恋愛の終わらせ方|恋愛
大学が冬休みに入ってしばらく。
彼は一人暮らしの私の部屋に入り浸ることが多くなった。
それは嫌ではないんだけど、どうも退屈で困る。
毎日会って部屋でごろごろしてイチャイチャして。
なんだかパターン化しちゃって飽きたというかなんというか。
「ねえどこか行かない?」
この間持ち込んだ部屋着でリラックスしきっている彼氏。
だぼだぼなスウェットはカッコよくないし、気をつかって着替えてメイクをしている私がばかみたい。
「外寒いし面倒じゃね?」
スマホから視線すら外してくれない。
二人で入っているこたつの中、足を何度もげしげし蹴るが反応はない。
嫌いとは違う、でも寂しさに鈍くなった、私のあいまいな感情。
「私たちってさ、距離開けたほうがいいのかな?」
その声に横になっていた彼がようやく起き上がる。
めんどくさそうに、それでも少し焦っているように。
まだ私を失うことに危機感はあるみたい。
でも同時にそんなことはないと少し舐められている感も。
「なにかあった?言ってくれなきゃわからない」
そう聞いてくる彼の髪はボサボサだ。
「私の声を聴いていないからわからないんだと思う」
ちょっと冷たかったかな。
でも別れを切り出さないってことは、私にもまだ未練はあるみたい。
「……ごめん、もう一回言ってほしい」
それから私は少しずつ彼に伝えた。
直してほしいところ、好きなところ。
ひとつひとつ頷きながら聞いてくれる。
何も言わず立ち上がると隣の部屋に行って着替えをしてきた。
髪を整えていて、大学で見るときの彼だった。
「これから気をつけます」
しっかりと頭を下げて謝ってくれる。
私はこういうところを好きになったんだった。
これからもよろしくね?
私も少し頭を下げた。
「俺からもひとついいか?」
もちろん、と頷いた。
「最近部屋に入り浸ってる理由覚えてる?」
「……うん?」
ちょっと不機嫌そうに部屋の隅を見ている。
山のように積み重なったゴミ袋。
そっちからちょっと酸っぱい臭いがしてた。
「お前が掃除をサボって汚部屋になって羽虫が湧いたんだよな?」
ストップストップ。
私の体力はすでに少ないよ?
「俺がずっとスウェットなのは服が汚れるのが嫌だったわけで」
「はい」
「三日も泊まり込んだのは汚すぎて一日じゃ終わらなかったからで」
「はい」
「大家さんとお隣さんから苦情来てたんだよな?」
「はい」
「部屋も風呂もトイレも台所も俺が掃除したよな」
「……はい」
勘弁してください。
もうやめて、私のライフはゼロよ。
「だからといって俺がだらけていたのは別問題でごめん」
「あ、いえ、そんな」
もう一度深々と頭を下げてきた。
心が折れそう。
「別に感謝してほしいとも思ってない。
でもな、そう言われるのは少し心外というか……」
「ごめんなさいいいいぃ」
調子に乗ってすいませんでしたああぁ。
「あの、お腹とか減っておりませんか?
ご飯などを準備しようかと」
「俺の掃除した台所で?」
うん、怒ってらっしゃる。
諦めて正座をして深々と頭を下げた。
「回るお寿司で勘弁してもらえませんか?」
「……っふ」
彼が真剣な顔を崩して爆笑をしている。
「そんなのいいよ、一緒につくろうか」
「もう大好きーー!」
彼の優しさに思わず抱きついてしまった。
首に手を回して全力で抱きしめる。
なんでこんな良い人が私と付き合ってくれているんだろ。
もうそれが謎だよと悩んじゃう。
「嫌だって言っても離れないから」
「俺もだな」
ぽんぽんと頭を叩いてくれた。
「でも、また部屋汚したら距離取るから」
「あ、調子乗りました、すいません」
惰性恋愛の終わらせ方|恋愛 岡山みこと @okayamamikoto
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