番外編 02「女王様と温かな食卓」

「女王陛下!本日のジャガイモの収穫量は、昨年の二倍以上ですぞ!」


 畑仕事から戻ってきた農夫が、泥だらけの顔をほころばせて報告する。


「素晴らしいわ!これも、皆が頑張ってくれたおかげね。今夜は、ジャガイモを使った新しい料理で収穫祭にしましょう!」


 女王アリシアは、エプロン姿で笑顔で応じた。


 建国初期のヴァンデルーク王国では、女王自らが民と一緒になって働く姿が日常だった。今日は、収穫したてのジャガイモを使ってアリシアが王都で読んだ本で知った「ポテトグラタン」なる料理を振る舞うことになっていた。


 厨房では、リナリアが古代魔法の知識を応用して作った「自動かき混ぜ機」が唸りを上げ、エリオットがどこからか仕入れてきた珍しい香辛料が並ぶ。


「カイ、あなたも味見していくでしょう?」


「いえ、私は警備の任がありますので…!」


 真面目な騎士カイは、アリシアが差し出すスプーンを前に顔を真っ赤にして後ずさる。そんな光景を見て、皆が笑う。


 その夜、城の広場には領民たちが集まり大きな食卓を囲んでいた。熱々のグラタンは、子供からお年寄りまで大絶賛だった。


 アリシアは、民の笑顔を見ながら心からの幸福を感じていた。


 王都での華やかな夜会よりも、ずっと温かく満たされた気持ちだった。


 悪役令嬢として過ごした日々は、まるで遠い昔の夢のようだ。私の居場所は、間違いなくここにある。この、大切な人々の笑顔の中にあるのだとアリシアは熱いチーズを頬張りながら、確信していた。

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