癒しの男
「ここは……どこですか?
あなたの部屋、ではないですよね。
なぜ、僕は檻の中にいるのですか?」
冷静に女に語りかけた。
まるで、患者を診察するかのように。
女は微笑みながら、僕を見た。
「ここは、あなたの墓場です」
物騒な言葉を、笑いながら吐く女に、
僕は背筋が凍った。
「墓場ですか?
僕はここで、あなたに命を奪われるのですか?
日本の警察は優秀です。逃げられませんよ」
手術が不安だという患者をなだめるように、
女を扱った。
女は、ダンボールの山の中から何かを取り出し、
それを持って戻ってきた。
真っ直ぐに僕を見つめ、
口角を上げ、
僕の心臓に銃口を当てる。
「なんの……真似ですか?
冗談はやめてください」
僕は優秀な心臓外科医だ。
ここで命が終われば、
助けられる患者を、助けられなくなる。
「今、あなたが助けたいのは、
あなた自身?
それとも、患者?」
―――はっとした。
“今”、助かりたいのは、僕だ。
僕の命が惜しい。
死にたくない。
僕が言葉を発しようとした、その瞬間、
銃声だけが、
コンクリートの部屋に響き渡った。
目を覚ましたとき、
僕は知らない公園のベンチに座っていた。
手に、何かが握らされている。
尖刃刀(スピッツメス)だった。
あの女は、誰だったのか。
なぜ、僕は捕らえられたのか。
あのやり取りは、何だったのか。
疑問だけが、脳裏に焼き付いている。
夢だったと、思いたかった。
それでも。
胸に当てられた銃口の冷たさだけが、
すべてが現実だったことを、
静かに、確かに、告げていた。
人間遊戯 余白 @YOHAKUSAN
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