人間遊戯

余白

傲慢な男

───ただ、人間で遊ぶのが好きなだけ。






なんで使えない人間ばかりなんだ。

上司も、同僚も、後輩も、仕事ができない。


店員は手が遅い。

ノロノロ走る前の車に、苛立つ。


もっと効率よく生きろよ。

俺みたいに。


煙草さえ、路上では禁止されている。

仕方なく iQOS に変えたが、紙煙草のほうが好きだ。

それでも臭いに文句を言われる。


……ったく、住みにくい世の中だ。


「きーめたっ!」


女の声が背後から聞こえた、と思った瞬間、

視界が暗転した。


目を覚ますと、冷たいコンクリートの床の上だった。


周囲を見渡す。

どこもかしこも、コンクリート。


そして気づく。


俺は、檻の中にいた。


正面を見ると、少し離れた場所に、知らない女がいる。

椅子に腰掛け、こちらを見ていた。


その光景が、無性に腹立たしかった。


「おい! 出せよ!

誰だよ! お前!」


俺は怒鳴る。


それなのに、女はニヤついたまま、俺を見るだけだった。


「出せよ! 誰だよ、お前!

いい加減にしろよ!」


女は、椅子に深くもたれ、天を仰いだ。


そして、大きくため息をつく。


「うるさい子は、きらーい」


嘲笑うような声。


……この俺を、誰だと思っている。


俺は、女に遊ばれるような男じゃない。


「さっさと出せよ!

おい、女!

出せって言ってんだろ!」


女は、何も言わない。


動きもしない。


椅子に仰け反ったまま、

ただ、天井を見上げていた。


まるで、


───俺の存在そのものが、

騒音でしかないかのように。

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