配信活動
バイトが終わって帰宅した。
今日はパフェを注文してくれたお客さんがいたからちょっと楽しかった。
あのお店だとパフェ作りはバイトの仕事で、予算内なら材料を使って好きに作って良いんだよね。
曰く、ハードボイルドなマスターはパフェなんて作らないとかいう謎のこだわり。
そういうの、嫌いじゃないです。
らんらん気分で盛り付けしていたら流石に盛りすぎた。
でもあのお客さん全部食べてくれたんだよな~。
こっちの世界では割と女性もたくさん食べるとはいえ、あれを食べきるのは中々の猛者だよ。
写真を撮っていたけれど、バズ狙いで食べ物を粗末にする感じでもないし。
そんなことを考えながら晩御飯を食べて、お風呂に入ったらそろそろ二十時。
配信の時間だ。
◇◇◇◇◇◇
今さらだけど、この世界は基本的に前世と同じ歴史を歩んでいる。
ちょこちょこ違うところはあるけど、大筋は一緒。
現代の技術や文明も似たような感じで、前世にあったものは大体この世界にもある。
なのでYouTubeみたいなサイトもあるしVTuberのような配信者もいる。
正確にいえば名前とかは違うけどね。
面倒くさいから今後も前世の名前で呼ぶかも。
そして、なにを隠そう僕自身がそのVTuberです。
高校に入り、最初のゴールデンウィークくらいから今のバイトを始めた。
何度もいうけど、この世界では男性だからってだけで無茶苦茶な優遇をされたりはしない。
近年になって急激に男性が減少しだしたとかならともかく、長い歴史をこの比率で生き抜いてきた人類なのだから、今さら男女平等の概念に逆らってまでそんな制度が作られるわけもないですよね。
そんなわけで、ウチは割と裕福ではないのでバイトしないとな、ってことで始めたのが今のバイトだった。
シフトは割と融通を利かせてくれるし、仕事内容もそこまで大変じゃないから、良いところを見つけたよね。
しかも学校までの道のりにあるから定期で通えるのも○。
そんな感じで勉強やバイトも含めて割と学生生活が安定してきたタイミング、時期的には去年の夏休み前にVTuberのオーディションを受けた。
そもそも前世でもVTuberはよく見ていたんだけれど、VTuberを知った頃にはいい歳だったし、単純に教員という仕事をしながらやるには色々と厳しかったからやろうとは思ってなかったんだよね。
ただ今世では時間もあるし、生活費の足しになれば良いなってくらいの半ば趣味として始めてみることにしました。
オーディションを受けたのはネクサス・ストリームという割と新興の小規模なVTuber事務所だった。
まあ、言葉を選ばずにいえば、十把一絡げというかなんというか。
VTuberファンが事務所のタレント一覧を見ても、知っている人が数人いるかどうかって感じです。
規模感でいうと、所属タレントは総勢十名、タレントのチャンネル登録者数は五千人から一万人がボリュームゾーン? 平均? といったところで、最高で二万人くらい。
ちなみに僕は今、活動開始から半年を過ぎたくらいで二千五百人ってところです。
ちゃんと収益化できてるんだぞ~すごいでしょ?
趣味とは言ったけど、社会人として会社に利益を還元はしておりますのでね。
ドヤッ。
それで夏休み前にオーディションを受けて、ぶっちゃけ大手とかと比べればそんなに厳しくない選考をくぐり抜け、レッスンを受けたり配信ソフトの操作を教えてもらったりして、去年の冬前にデビューしました。
マネージャーさんとかは、『もう少し早く収益化できていれば、クリスマスもバレンタインもあったのにもったいなかったですねぇ』なんて言っていた。
これは別に『お前の収益化が遅かったせいで~』みたいな文句じゃないんだよ。
本当に純粋に、僕に利益がいかなくて残念って意味で言ってくれていたと思う。
一応それぞれイベントに
一般の人にはわからない……というかVTuberさんに話しても『えっ……?』って言われるような内容なんだけど、別に悪どい事務所ってわけじゃないんだよ。
本当だよ。
VTuberってとにかくイニシャルコスト──えっと、初期投資が高いんですよ。
プラットフォームとかやりたい内容にも依るんだけど、実写の人は最悪スマホさえあればそのまま配信開始とかできるよね?
TikTok(的なプラットフォーム)とかを見ていると、縦型でお喋りしているだけの配信とか見かけると思うけど、あれとかなにも用意せずに始められるわけ。
もちろん映える感じにインテリアを整えたり、メイクや服装にお金をかけたりする人もいると思うんだけどね。
でもVTuberの場合は基本的にPCが必須だし、Live2DっていういわゆるVTuberとしての身体を作ってもらわないといけない。
最近はコミッションサイト・サービスっていう取引の仲介をしてくれるサイトやサービスがあって、そこでは最低額でいえば数万円とかのLive2Dモデルが取引されていたりもするのだけれど、それは汎用モデル──お金を払えば誰でも同じものが使える──だったり、クオリティが担保されていなかったりで、企業勢としての使用には耐えないことが多い。
だからVTuber事務所は正式にイラストレーターさんとかLive2Dのモデラーさんに依頼をして、本当に本当の最低額で二十万円とかからかけてモデルを作らないといけない。
しかも僕みたいにPCを持ってない人だったらその分も買ったり貸したりしないといけない。
色々と細かい話をしちゃったんだけど、要するに僕をVTuberとしてデビューさせるためだけに、諸々含めて百万円以上のお金がかかっているわけですね。
なのに配信を開始したら即座に広告収益が生まれるわけでもないと。
企業というのは、赤字をそのままにはできないんですよ。
銀行さんからお金を借りていたりする状況で、『今年は赤字でした~来年は頑張ります~』は通らなくて、『赤字を出すってことは貸し付けたお金が返ってこないんじゃないですか?』と思われて『なら早めに返してもらいますね~』とかってなるわけ。
すると最悪、予定していたお金の使い道に回せなくなって、利益を生み出せなくなって、会社が倒産する、という流れに繋がるわけですね。
なのでVTuberデビューで作った百万円以上の赤字を、少しでも早く黒字に近づけるためにそういう条件を課されているというわけです。
別にこの契約内容が一般的かどうかは知らないけど、僕はそれに納得した上で契約したという話ね。
なんなら企業としてVTuber事業を存続させようと努力してくれている、ってありがたく思っているくらいなんですよ。
噂で聞く程度だからそこまで確度のある話じゃないけど、いわゆるVTuberブームが起こって、二匹目のドジョウを狙って雨後の筍のように生えてきたVTuber事務所の中には、そういった経営のことなんてなにも考えてなくて、ただ配信ごっこをやらせてプロデューサーごっこを楽しんで会社を潰す人もいたらしいからね。
それをどう思うかは本人たちにしかわからないことだけど、僕はもったいないなって思うんだよね。
本気でやる気のある、才能のあるタレントさんとかからしたら、本気でやる気のある経営者の元で活動した方が良いよね。
倒産してキャリアが途切れたりするのは、はっきりいってマイナスだよ。
適切なサポートさえあれば大成したはずのタレントさんが、人生の貴重な時間やお金を無駄にした可能性があるって思うと、やりきれない気持ちになるよね。
別にタレントさんは一切悪くなくて企業側が全面的に悪いなんて言うつもりはないけどね。
逆パターンも全然あるらしいから。
◇◇◇◇◇◇
こういった話をちょうど僕がリアルで進級したあたりの収益化記念、兼ハーフアニバーサリー配信でしたところ、ほんのちょっとだけ界隈をざわつかせたというか、物議を醸しちゃったんだ。
僕に対するマネージャーさんのその物言いはどうなのかとか、その契約内容はブラック(やりがい搾取)じゃないかとか、そういった契約内容を公表するのはどうなのかとか、引退したVTuberが時間を無駄にしたって言うのかとか、色々とね。
正直なところ、うるせー寝る! ってソータみたいに言えたら良かったんだけど、素直にごめんなさいしました。
余計なことに口を出したのは間違いないしね。
ただこの話をしたからかはわからないけど、ネクサス・ストリームを見直す声みたいなのもあったみたい。
マネージャーさんが言ってた。
ちなみに契約内容を話すのは契約違反じゃないんだよね。
僕の場合は、配信で話す内容は毎回事前にマネージャーさんに投げている。
そりゃ今日の晩御飯がなんだったかとかそういうのまで言っているわけじゃないけどさ。
そもそもウチは事務所との契約内容について、割とみんな話している。
他の事務所がどうかはわからないけど、広告収益──生配信とか動画の視聴、投げ銭や有料メンバーシップのお金も含む──は6:4でタレントの取り分が多めになっていることは地味に有名で、それを目当てにウチを目指す人もいるらしいとかで、むしろどんどん話してくれって言われているくらいだから。
件のグッズ収益に関しても、収益化後はその配分だしね。
数は多くないけど、コラボした他事務所のVTuberさんとかから羨ましがられることもあるんだよ。
そんなこんなでVTuberとして活動して、一応お金ももらい始めているって感じだね。
◆◆◆◆◆◆
本日は20時、22時にも投稿しますので、良ければ目をとおしていただけると幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます