構成に支えられている作品だ.良い意味でこの尺で初期地点から物語の大半を占める部分が勝手な憶測に基く追跡に落ち着くのは予想外で,散文的な語りが空中分解しない努力も概ね適切に成されている.終盤にこそ難はあるが時系列の交錯と感情の擦れ違いが上手く絡んだ話だと思う.
細波が連鎖するような意識の切り替わりが目まぐるしいモノローグは読み始めの段階では目が滑る──語られている事情が人物設計を反映したよくある話の域を出ないので最初の掴みが弱いからというのもある──が.そうした性質の文章が織り成すグルーヴ感に載せられるまでも早く,作中に登場する人物数に対して数多い場面転換が特徴的な本作の構造と合っている語りと最終的には感じる.
偶像/Aから見たBと実際のBの異なりという点で束ねたテーマに対して忠実な作劇は一貫性があって読み易い.作中中盤までに示されるその一貫性を裏切らない結末を据えてるのが好印象で,かなり普遍的なよくある形のオチなんだけど物語に応じた物として腑に落ちるというのは至極大事な事である.
構成と展開が噛み合う第2話が作品の見所として尤も大きく,展開の為の単なる仮想敵に思えた彼──彼の表面的な背景に一人で突っ込みまくる2話冒頭の場面はコミカルなようであんまり面白くない勢いだけの言及だったので最初こそ不安が過ぎったが──の登場により,これがどういう物語なのかの示唆 また同時に展開される彼女たちの過去の姿による物語の推進力の補強と過不足ない.
一方で物語に幕を引く3話に対しては否の側面が強い.語り部が特定個人にしか眼中がないという設定が,語り部と敵である彼の遭遇をひどく陳腐な物にしてしまっているし,これが最後の展開まで尾を引いてもいる.
本作は感情の爆発(彼に対してのそれは明確な嘘なのだが)がある意味 人物と人物の別れを意味するアクションとして配置されているわけだが,それが1話の中に集中しすぎていることでそこまでの関係値や物語を締めるフレーズとしての/あるいはその文章の纏まりの中に配置された決定的な文章としての強さが薄まっている.ゆえに構成の妙を意識した作劇がそこで失速したと顕著に感じる結果を招いているようにも感じた.
確かに結末に妥当性はある.
あくまで時系列が最新の部分で終わらない、擦れ違いの切なさを決定づけるような気の使い方も好きだ.しかし作品としては妥当性に終始しすぎている最終話というきらいもあり.たとえば物語の掴みは彼女にとっての偶像による決別の台詞から始まるなど,テーマに忠実な妥当性のある展開が続くからこそ そこ(決別)に至るまでの足取りを我々目線で見送る黙示録的な構造でも作品の後味としてある切なさは演出出来たのかもとか考えたりしていた.
振り返るとWEB小説において1話の中で視点が切り替わりすぎる手法は一般的に推奨されないからこそ,そこに作劇に及ぶ情緒的な意味を持たせる工夫は良かったし,語り部にとっての理想の偶像が我々の目線では普遍的な人間の域を一切出ないのがクレイバーな割り切り方で好印象.