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Q 君は2000もの作品を淡々と書き上げて来たけれど、其れに対して『いいよなぁ。レビューとか感想とか、ポイントとか』貰えて、などと言われたらどうする?
A じゃあ君も書けば良い。淡々と一日約八百文字の短編を最低一作品、上げれば良い。君の意図が煽ってるなら申し訳ないけど、眼中にはないよ。
そう答えるだろう。努力する側が、努力してない側の戯言や振る舞いに目を向ける事はほぼない。全てに置いて。
まぁ世間一般では『結婚して子供産んだら男性を頼らないなんて無理』という言葉がよく飛び出してくる。其れは否定しない。間違いなく、妊娠出産産後は行動が制限される。自分意外の誰かを頼らなくてはならなくなる。
しかしだからと言って『だから自分に金を掛けてくれる、奢ってくれる、プレゼントをしてくれる男性が総じて、妊娠出産産後の面倒を見るか』と言われたらいいえだろう。
ただの支配欲からそうしているのかも知れない。言うこと聞かせたいからそうしているのかも知れない。其れは何も『自分に対価を支払ってくれたから』この一点だけで分かるものではない。
分からないから私は多少無骨であっても嘘をつかない人を気に入っている。
其れに類する話ではあるが、『私は綺麗にしている。だからその分の対価を貴方が保証しろ』というのもズレた話だなぁと思うのだ。
目が覚めて、トイレに行った戻り道、洗面所で手を洗おうとすると、鏡花がまつ毛を弄っていた。くるりと纏ったパジャマ姿。雑にまとめ上げられた髪。『今日はお休み〜』という宣言から、態々化粧するとは思えない。だからきっと、化粧ではない何かをしているのかも知れない。
「お手々洗うのー? 今退くから」
そう言って、まつ毛に何かを塗っていた物を下ろし、距離を開けた。
「出掛けるのか?」
俺の視線に気が付いたのか、鏡花は長細い道具に持っていた棒を突っ込んで、何か液体を纏わせながら、こういった。
「違うよ? あーこれね、睫毛美容液。冬場だし、乾燥とかそれなりに酷そうだから塗ってるの。お洒落の良いところはやってるだけで、自己肯定感上がるところ。即効性があるところ。だから皆クセになる」
其れはお前だけだろ。少しでも気に入った物に嬉々として手を出して、継続出来るのは万人に出来ることじゃない。だから大抵、面倒臭くなり、その対価を人に求める者もそれなりにいるようだが。
「大丈夫だよ。別に睫毛美容液分の金支払え。綺麗でいるには金掛かるんだからって、せしめないあから。まぁこれより良い物買えば良かったかなとは思ってるけど。
……でも、そうだね。私が今以上、それこそ人生かける程、美容に気を使っていたら、だらしのない人はそもそも目に入れないでしょう。同じくらい頑張ってる人としか話したくないよ。相手にしたくないよ。
……君が物書きに必死にならない、人生に全賭けしてない人の相手をさないようにね」
朝露に濡れた伏し目がちの、長い睫毛が此方を捉えた。お前も同族だと。
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