Endlles Story~短編~

黒麒白麟

dream:泡沫の輝き

遠くに星が見える。


それはいつもの星空。


遠くに光が見える。


それは、ゆっくりと落ちてきて……



「……」

黒い衣が横たわる、その隣に小さな光は力なく落ちてきた。

今いる世界は夜の暗闇に包まれている時間。少し離れた所に旅の仲間が眠っている。

朝になればきっとこの光は消えるだろう。それ程弱っている。


黒い衣のラセンはその光に合った魔力をそっと流し込んで、薄目を開けた目を再び閉じた。


「いつの間にいるのかと思ったら、寝てるのか」

朝の時間、穏やかな光がふりそそぐ木の下で目を閉じているラセンを覗き込む。白い衣を着たキシンは珍しそうに見つめていた。

まず普段眠る姿を滅多に見せない彼女、そして小さな光をまとった星の子がその彼女にすがるようにしてこちらを見上げている。

「はぁ〜、なんやこれ?」

後ろからひょこりとヲウムのリーフォが様子を見に来た。続いて白いヒョウの子ども、クルオンもなになにとやって来た。

「星の子どもだよ。星の意思の概念、本来なら石やらガスやら集めて大きくなるはずなんだけど…生まれる場所を間違えたみたいだね。」

「どーゆーこっちゃ」

キシンの言葉にリーフォは小首を傾げる。

「このままここにいると消えちゃうって事だよ。早く元の場所に帰してあげないとね」

クルオンが尋ねる。

「星の赤ちゃん?」

「そうだよ」

クルオンはおはようと星の子に声をかける。星の子はピャっと驚いて黒い衣の中に隠れてしまった。

「大丈夫だよ〜、出ておいで〜」

星の子はますます怯えて黒い衣の中へと姿を隠してしまった。

「隠れちゃった」

「なんでこんなにラセンに懐いてるのか分からないが、そのうち出てくるだろう」

キシンは軽くため息をつく。


星には意思がある。

始まりから終わりまで、植物のように1つの場所に留まり続ける。流星や隕石はその星の手紙のようなものや、意志の分離だったりする。

星は沢山集まれば引き寄せるチカラが強くなる。

宇宙の均衡を保つ為に、星が増え過ぎても少な過ぎても困る事になる。

どう困るのか……は、キシンは分かっていない。

そのバランスを崩す。星を食べ続ける神、オクを倒すこと。

ただそれだけの為に、今は失ったチカラと記憶を集める旅をしている。

目の前にいる小さな光が星の子だという事は分かっても、元の居場所を探す手立てが無い。

自分より多くの失ったチカラと記憶を取り戻してるであろう、ラセンなら分かるかもしれないが、肝心の本人は眠っていて起きる気配が無い。


「起こしてみるか…」

そっとラセンの頬にふれてみる。

「おーい。ラセーン。」

冷たい感触が伝わってくる。この冷たさは死体と同じ。

触れていて気分の良い温度ではない。

互いに不老不死の為、死ぬ事は無いが仮死状態になる事はある。回復速度が追いつかない程の重症を負っていた場合がそれだ。

そしてラセンは幻覚で傷を隠す癖がある。

「起きへんなぁ」

「起きないね〜」

リーフォとクルオンがそれぞれ(くちばし)と前足でラセンをつつく。

その様子を星の子は、黒い衣の中から震えながら見守っている。

「困ったな。俺じゃ何も分からないんだよなあ」

「何が分からないの?」

「星の子の元の戻し方だよ。知識としてあるものと無いものがあるから」

子どものクルオンに話しても解決はしないだろう。

自分という存在が大人でも子どもでもない、光という概念の1つで、子どもと思うのが良いのか悪いのかも正直分からない。

そんな小さな悩みを思っていると、

「じーちゃに聞いてみようか」

「…星詠の翁か」

そんな事を提案してくれた。



じーちゃこと星詠の翁は、クルオンを旅に導いた人物だ。

クルオンの故郷が星喰いの神オクに滅ぼされた時、唯一逃げ延びたクルオンを助け、キシンとラセンの存在と役割を伝えた。

いわく、クルオンの故郷の星を蘇らせ、亡くなった両親を生き返らせることが出来るとのこと。

2人は過去にもオクと戦った事があり、その際に力尽き、持っていたチカラは記憶と共に様々な星へバラバラに降り注いだそうだ。


ただ、星詠みの翁の居場所は隠世。死者側の世界。

その中でも何処とも繋がり、何処とも繋がらない更に隔離されたような空間にいる。

そうラセンは言っていた。

「鍵、使えそうか?」

「分かんない、やってみる」

星詠みの翁のいる場所へ繋がる鍵を、クルオンは持っている。

その鍵は使えたり使えなかったりする不安定なアイテムだった。


クルオンはガサゴソと胸毛を探って鍵を取り出す。

金と青の簡素な装飾の鍵、それを咥え、後ろ足で立って勢いよく何も無い空間に刺すように動く。

カチャリ、と音が鳴った。

「ふぁいはよ!」

「開いたなぁ」

見守っていたリーフォが口を開いた。

何も無かった空間が歪み、小さな灯りのある風景が映し出される。

そこにリーフォが飛び込み、続いてクルオンが。そしてラセンを抱えたキシンが入り終わると歪みは消えた。



「じーちゃ!」

「おや、誰が来たかと思えばクルオンか。よう来たねぇ」

柔和な声で星詠みの翁が迎えてくれる。

「邪魔するで〜」

「お邪魔します」

リーフォとキシンが挨拶をする。

「今日はおそろいかな?それと、小さなお客様がおるね」

星詠みの翁は、姿を見せない星の子の気配を悟ったようだ。この人物は鋭く博識で、困った時にいつも助けてくれる。

人のカタチはしているが、気配が人ではない。

キシンにとってラセンの次に謎めいた存在だった。

「星の子がラセンの服の中に隠れてるんです」

キシンが説明する。

「ふむ、となると今回の相談は星の子についてじゃな?」

目的をあっさり見抜いて、キシンの抱えるラセンに近付く。

しばらく見つめたあと、

「どうやら、ラセンが星の子を生かしておるようだの。自分の命を溶かして星の子に魔力として渡しておる。これじゃあ自身の傷を癒す事も出来ぬな」

「……」

触れた冷たさは、命が流れ出ている証だった。

そんな事も分からずにいた自分に歯噛みする。それを察した星詠みの翁は静かに言葉を紡ぐ。

「そう気落ちするでない。光と闇の概念が反発的であればあるほど、お主の治癒のチカラはラセンには届きにくい。ましてや深き暗闇を無理に照らせば傷を広げるばかりじゃ」

「そう、ですが…」

口篭るキシンに翁は続ける。

「今は失ったチカラを取り戻しておる途中、ラセンの幻を操る術を見破るのも容易ではなかろう。傷は陰のもの、暗闇から暗闇を探せるものではないよ」

そう言って、こちらへ来なさいと奥まった部屋へ案内してくれた。

「暗闇から…暗闇」

見ようとすれば見れるはずなのに、それが出来ない。

チカラ不足だからなのか、ラセンが上手 (うわて)なのか。

見れるはずと言ったのは、キシンが神界に捕らわれていた時に出会った、神族のヴァルスと言う人物。肩で切りそろえられた髪型の、神族でありながら闇を愛すると語っていた主神の子。

ラセンに付きまとっているので、出来れば思い出したくない。

頭(かぶり)を振って、星詠みの翁の後を追った。



星詠みの翁の住まいは、上から見ると雪だるまのような形をしている。大きな部屋に大きな望遠鏡。少し小さい部屋には広い寝床があり、その間には囲炉裏がある。

出入口は2箇所、部屋にそれぞれ1つずつ。外は全て断崖絶壁、浮島になっている。

浮島の周りは全て満点の星、宇宙にぽつんと浮いている。

この空間は本当に宇宙と繋がっているけれど、外からは見えないし干渉できない。この浮島の持ち主が、繋がる事を許さなければ誰も入れないようになっている。


大きな部屋の寝床にラセンを横たわらせる。息は僅かにある、布ズレの動きが見て取れる。

ラセンを見かける時は、いつも何かと戦っている。ずっと戦いの中に身を置いて、クルオン達と関わろうとしない。かと思えば瀕死の状態で動けなくなっていたりする。こうして静かに寄り添うように居てくれるのはとても珍しい。

正直、彼女が何を考えているのか分からない。長い眠りから目が覚めて、出会った時からずっと。しかも更に混乱するのが今の彼女と取り戻した記憶の中の彼女がまるで別人な事。

取り戻した記憶の中の彼女は、今より背丈が幼く、髪も短い。大人しめだけどハツラツとしていて、笑顔が眩しいのだ。

「笑ったとこ、見た事ないな」

「なんて?」

独り言にすかさずリーフォが反応する。苦笑いをして何でもないよと答えた。


「さて、星の子についてじゃが」

ラセンを挟んで、キシンの向かい側に星詠みの翁は座り込む。

「正確には、星から外れてしまった子じゃな」

「外れてしまった?」

星詠みの翁は長い髭を撫でながら、うむと頷 く。

「星の成り立ちは知っておるな?」

「岩やガスを引き寄せて大きくなる、ですね」

「簡単に言うとその通り。星は1つの意思から何度も分かたれて今の数に至る。宇宙を育てた白ヤギの話は〜…またするとして、その子は星になり損ねた欠片じゃ。元に戻すには、その子に星の名前を思い出してもらう必要がある」

「星の名前?」

クルオンがとたとたと寄ってきて、星詠みの翁の隣にちょこんと座る。

「そう、星にも名前がある。文字や言葉に表せないものから、見つけた生き物に付けて貰ったものまで、全てに名前がある。名を無くしてカタチは保てぬし、認識もされない。

記憶に残るカタチ、それが名じゃ」

「ラセンに隠れてる奴は、名前を忘れてるってことか?」

リーフォはそう言いながら、ラセンの黒い衣の中に頭をつっこむ。中でトタトタと慌てる音がした。

「消えかけておるということは、そういう事じゃ。早く思い出してもらわんと、ラセンが消耗しきり、仮死状態になってしまうぞ」

「……っ」

不老不死の仮死状態は良いものではない。死に伴う苦痛はあるし、仮死状態になれば全ての感覚が麻痺する。最悪視力も聴力も機能しなくなるし、痛覚が絶たれるので無茶を重ねやすい。

何より回復速度も遅くなる。

キシンはその状態になった事はない。全て目の前で見てきた事。治癒術が及ばず、静かに息絶える彼女を何度も見たくない。本当の死が無いと分かっていても、幻術すら使えなくなった彼女の傷は見るに堪えなかった。

こうして目の前で弱っているのに、自分に救える術がほとんど無いのが辛い。浅い傷は治せても、深い傷はほとんど治せない。隠されていたら尚更手の施しようがない。


「キシンよ、星の子に心音(こころね)呼びかけてみなさい」

心音とはテレパシーのことだ。声を使わず、思いを念じて届ける。無音の会話が出来るだけじゃなく、映像のやり取りも出来る。

「分かりました」

息を整え、星の子の光を探す。ラセンの黒い衣の内側で、震えるように明滅してる淡い光が見えた。

(初めまして、小さな星の子さん)

(きゅ…)

呼び掛けに小さく答える震えが伝わった。この感じは消えかけの炎のようだ。ラセンが生かしているとはいえ、危うい状態なのだろう。

(大きな星になろうとしたんだよね?)

溜息のような、悲しい空気が伝わってくる。

(君を元の場所に還したい。星の名前を思い出せるかな)

(なま、え…)

困ったように俯くような想いが届く。うまく思い出せないのが分かった。

(もう、すぐ、きえ、る)

星の子は泣いていた。ラセンを見ると、僅かに顔が[[rb:苦悶 > くもん]]に歪んで見える。急が無ければどちらも生き続けられない。

魔力も霊力も、あらゆるチカラは尽きる事はない。ただ一度に出力できるチカラには制限がある。概念が肉体を持つということは枷であるが、ただ1つ、祈りのチカラにおいては増大する。肉体を通した祈りは強い。

仮死状態になれば、チカラの巡りも悪くなる。外側にチカラを向ける出口がすぼむような、そんな感覚らしい。星の子に渡し続ける魔力も先細りして、保つチカラより消えるチカラの方が上回るだろう。


ラセンの手を握り、治癒を施す。何処を怪我しているのか、弱っているのか分からない。それでも全身に伝わるように再生力を増すように、命の灯火を渡していく。もう少しだけ、ラセンには踏ん張ってもらわなければ星の子は消えてしまう。

自分が代わりに魔力を渡せれば良いのだが、加減をしたチカラの渡し方が出来ない。どんな相手にも等しく強く照らす日差しとなってしまう。体力の無い患者が薬に負けてしまうように、弱っている星の子に魔力を渡せば焼き殺してしまうだろう。


「……」

少しずつ記憶とチカラを取り戻しているのに、出来ることが増えるどころか何も無い。一体自分はなんなんだろうと落ち込む。

(ずっと、イタイ)

考え事をしていたら、星の子から声が聞こえた。

(痛いの?)

間接的でも光のチカラに当たってしまっただろうか。

(イタイ、っていってる、キコエル)

誰の痛みだろう。星の子では無さそうだ。もしかして

(ラセンが痛いって言ってるのか?)

星の子は小さく瞬いた。思わず握っていた手を離し、近くにいたクルオン達を驚かせた。

「キシン、大丈夫?」

「……俺は、大丈夫」

弱々しく答える。加減はしていたつもりだけど、自分が光というだけで治癒のチカラは癒しではなく傷付ける行為になる。

ラセンのように傷移植が出来たなら、ちゃんと助ける事が出来ただろう。

「翁…」

「上手く聞き出せなかったのかな?」

「そうじゃなくて、俺にもできませんかね。傷移植」

傷移植は相手の傷を自分に移し、自分の健康な部位を相手に移して治療する治癒術。時を移せば時移植、寿命を与える事が出来る。

星詠みの翁は、そうじゃなぁと呟くと

「ラセンに出来ることは、本来お主にも出来るんじゃよ。

光と闇で役割こそ違えど、方法が異なるだけで同じ結果は引き寄せられる。ただ、傷移植とは治癒術の中でもやり方が古くての」

小さな杖を取り出し、床をつつくと分厚い本が現れた。パラパラとすぐにページがめくれてピタリと止まる。

「神々が世界と生まれた、原初の神というのがおる。太古の神とも言う。分け与える、分かち合うという身を削ることで世界を守っていたのじゃ」

「…古いやり方は珍しいのですか?」

「珍しいの。今は宇宙にエネルギーが満ち溢れておる。外から持ってきた方が楽じゃし、循環して生み出せば尚良い。

お主の治癒術がラセンに合わんのは、恐らく循環出来ないもの。つまるところ、水と油じゃの。汚れた水を綺麗にするには、綺麗な水で綺麗になるまで注げば良い」

キシンは目を瞬(しばた)く。

「俺は、いつも油を注いでたという事?」

「純粋なエネルギーとしては問題ない。ただ、用途に合わないモノに注げば壊れる原因となる」

栄養があるからと、赤子にミルクではなく骨付き肉を与えるようなものだと星詠みの翁は言った。

理屈は分かった。今のままではラセンを傷つけてしまうことも。

「もしかして、俺が傷移植をしてもラセンの治癒に使えないということでしょうか?」

星詠みの翁はうなずく。

「相手に合わせる事が出来なければ、水で満たされた肌に燃え盛る肌を移しても意味はなかろう」

「俺は……どうすれば」

相手に合わせる。気持ちは出来ても、チカラの操作が上手く出来ない。何故なのか。

「おそらく、神族に何か操作されておるせいで出来ぬのかもしれんな」

「神族…か」

取り戻した記憶の中でも時折見る、神々の一部。人の願い、想いの数だけ居るとも言われている超常現象や、人の理解を超えた概念がカタチになったもの。

関わっている神族はみな、闇を忌み嫌っていた。穢れ、恐れ、命を危ぶむ罪そのものとして扱っている。ラセンと初めて出会った時、長い眠りについていた彼女の体を酷い有様で封じていたのは神族だった。

神族は常にキシンの持つ光チカラを求め、ラセンを滅ぼそうと襲ってくる。捕まってしまった時に、神族に何かをされていたのかもしれないが覚えていない。


「ラセン…」

もう一度、離した手を握る。ラセンと繋がっている星の声を聞いて、早く送り帰さなければならない。

(星の子、どうしたら名前を思い出せそう?)

(……)

星の子は小さく瞬くだけ。しかし、隠れるのをやめてラセンの胸の上に移動する。

(つかって、ボクを、つかって)

星のチカラが感じ取れる。冷たいのに、優しい温もりを感じられる。

命は星から生まれる、星に育まれる。希望も絶望も、星を巡る風と共に時を刻む。そんな大きなチカラを、小さな星のカケラからも感じ取る事が出来る。

(巡れ巡れ…星風よ、廻れ廻れ環(か)の水よ

言の葉が自然と紡がれる。想いをカタチにするのに、形式的な詠唱や儀式は無くても出来る。ただ創造のままに現象を手にする。ただ繋がりにおいて言葉は強い結びつきをもたらす。

(巡れ巡れ……)

命は循環する、その巡る命を傷の癒しに。命は帰結する、終わりがあるものこそが命。その刹那の揺らぎを闇に換えて。


手にする星のチカラが解ける雪のように消えていく。

それは星の子の終わり、カタチも意思も保てず治癒のチカラとなってラセンの傷を癒して消える。

(ばいばい)

(……)

何も言えずに消える気配を目を閉じて見送る。

命を食べて、命を繋ぐ。生き物にとって当たり前の事が、治癒に通じた。ラセンの治癒に必要なのは、他の何かの命のチカラだった。

ただ、星の子が何故、自ら消える選択をしたのか分からない。



「願いを叶えたか」

傍で見守っていた星の翁は呟く。

「願い…?」

ラセンの傷を治したいと、確かに思っていた。その思いを星の子は汲み取ったというのだろうか。

「ずっと治癒の方法を探しておったじゃろう?流れ星は願いを叶えるとされる。星の子は元々流れ星として消える運命だったのじゃろう。たまたま残った残滓がラセンによって生き長らえた。ラセンがどうしたかったのか、分からぬがな」

「……」

どうしよう、気まずい。星の子は名前さえ思い出せたら消える事はなかったこと。それを治癒の為に消費しただなんて、ラセンになんて言えば良いのだろうか。彼女の目が覚めたら真っ先に謝らないと。

「星の子は死んじゃったの?」

クルオンが寂しそうに言った。

「そうとも言えるの。ただ願いを叶えるという役目を果たしただけじゃ」

「うーん…」

「おっ、ラセンが目を覚ましたで」

クルオンと一緒に事の成り行きを見守っていたリーフォが言った。見ると、ぼんやりと目を開けている。

「ラセン…ごめん」

「……いい」

ゆっくりと、落ち着いた声で返事が返ってきた。許すとも許さないとも言わない、淡々と事実のみを受け入れる声。

「ごめん…」

[[rb:項垂 > うなだ]]れるキシンの姿を横目で見る。軽く息を吐いて起き上がる。どこいくの?と尋ねるクルオンを置いて、星詠みの翁の家を出た。




暗い宇宙に瞬く星達。この暗がりに星の光が満ちるまで、長い時間がかかるだろう。星が減りつつある今、どんな小さな星でも救いたかった。まさか願いを叶えて消えるとは思ってもみなかった。

キシンであれば星の子の名を探れると思って、星の子の存在維持に徹していたのが良くなかった。やはり、希望を誰かに託すものではない。

「ミオ……」

自分の中に消えた星の名を呟いて空を仰いだ。



「気をつけての」

次の世界(ほし)へと旅立つクルオン達に、星詠みの翁は声をかける。

「じーちゃ、助けてくれてありがとね!」

「いつも助けてくれるとありがたいんやけどなぁ。せや!一緒に行けばええねん!」

リーフォの閃きに、ただわらって返す星詠みの翁。キシンも笑って言う。

「お世話になりました、また来ます」

「うむ、待っておるよ。ラセンも達者での」

それに答える声はない、ただ目を伏せて仲間を待っている。

その姿は人ではなく、星を渡る為の巨大な竜の姿をしていた。

クルオン、リーフォとキシンが竜の背中に乗ると、ラセンは大きく羽ばたき星詠みの世界を後にする。

次にクルオンが導く世界へ、失ったチカラと記憶を取り戻す旅と星喰いの神を滅ぼす結末を得る為に。旅の仲間を乗せた闇色の竜は、宇宙の暗がりに遠く消えて行った。

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