宿り蟲
@Dzhsz
第1話 巣食う想い
夏の暑さと、蝉の鳴き声がこだまする昼休みの教室にて。
「俺、料理好きじゃん?」
「うん。」
スマホを見ながら適当に相槌を打つ。
褒めて欲しいのか?、めんどくせぇ。
「大学をさ料理系にしたいんだけど、親に反対されてて。」
「あー、まぁ好きならいいんじゃね?」
「酒井湊ー!日直の仕事忘れてるぞー。」
「相談ありがと、伊織、先食ってて良いよ。」
「おん。」
“ 好きなことを仕事にしなさい。 ”
最近よく聞く言葉だ。しかし、考えてみて欲しい。
もし、好きなことがなかったら?
いつも思う。好きなことがなかったらどうしたらいい?
親に反発するくらいやりたいことがある、周りを気にせず男一人で料理部に入る所とか、湊のそういう所の全てが見ていて胸焼けがする。
思えば何にも俺は本気でやったことはない気がする、どこか自分を俯瞰的に見てしまうと言い訳をして。
なのに、うちの親は好きなことをしていいって、失敗しても良いと言う。
あんたの息子には好きなことが無いんだよ。
そんな優しい親に苛立ちを覚えてしまう自分にも腹が立つ。
湊もそうだ。俺とは違ってこの学校にも好きで入ってきた。料理部でコンテストに出れて大学に推薦が書けるからと。
それでいて湊は何でもできる。勉強も運動も。
でもそれは全部好きを選ぶため。何でも出来るのは好きなことのために努力しているからなんだと、全部分かってる。分かってるんだ。
だから、悔しい。つらい。羨ましい。妬ましい。
“ 眩しい。”
だから努力しきれないことを好きなことが無いせいにする自分に吐き気がする。
「クソッ。」
一緒にいると自分が駄目だって分からさせられるよ。
優しさは時に毒だ。
翌日、目が覚めると身体に繭ができていた。
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