あの人がいなくなって、初めて気づいた

@nonoh

追いつかない気持ち

 日常が変わってしまった。

 いつも満たされていた帰り道は孤独を噛みしめるものになり、休日のカレンダーは真っ白になっ

た。

 先輩は一つ上だったから、学校にいる間だけまだ日常が続いているような心地がする。

 そんなはずはないと、頭ではもう理解し終えているのに。


 私は会話が得意ではない。よって心配してくれる人がいないはずだったのだが_____「佐藤さん、大丈夫?」

 驚いて上を見上げると、高宮さんが私の顔を覗き込んでいた。いつから見られていたのだろう。


「何のこと?」

可愛げもなくそう尋ねてしまう自分がいる。

「高木先輩。彼氏だったんでしょ?」

 知られていたのか。

 別に隠しているつもりはなかったのだが、生徒同士の情報網はすごいなと感心する。


「大丈夫なわけ無いじゃん。悲しいに決まってるよ」

 悲しい、というより寂しいに近いのかもしれない。それよりもまずは、放課後なのにまだまだ人が賑わっている教室で、泣いてしまうことだけは阻止したかった。

「そう、だよね」

 上を見れない。感覚の鋭い高宮さんに気づかれてしまう。


「じゃあ帰るから。またね」

 同情してくれているのかは知らないが、私はこの気持ちにきちんと蓋をしたい。溢れてきたこの

気持ちをどうにかして抑え込まないといけない。


 知らせがあった昨日の夜のような、思いをする前に決着をつけたかった。思い出してはいけない。

 爪で引っかかれるような胸を見て見ぬふりをしながら、私は教室を飛び出す。

「いつでも相談してよ」

 囁くような高宮さんの言葉に私は頷くことができなかった。

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