第2話 古びた街

「次の街へ走ったものはいいものの、結構長いなー」


 トルテはお母さんと別れの挨拶を交わしたあと、

 隣の街へとしばらく走り続けていた。

 

「ついたら宿屋に入って、ゆっくり休もーっと!」


 宿屋のことを考えるのは、まだ街が見えてないのに早い気がするが。

 トルテは基本的に体力があり、運動神経がいい。

 何故かと言うと、亡きお父さんに体術を習っていたためである。

 それに加え、波動というものが使える。

 トルテは今もそれを忘れず、亡きお父さんのことをずっと忘れたくなくて、子供ながらに体術をずっと練習し続けていた。


「あっ!街が見えた!」


 夢中で走り続けて1時間、ようやく街が見えてきた。


「このまま突っ走るぞー!」


 いつも感じるわくわくを体感しながら、少し走るスピードを上げて素早く走っていった。


 そこには泥がかけられたようにくすんで汚れている家の壁や、欠けた屋根、のびのびと生い茂った草が生えていた。


「ついたー!食料はお母さんが詰めてくれたから、まだいいかな?宿屋を探さなくちゃ!」


 やっとついたと最初の小さな一歩、達成感を感じながら宿屋を探すことに決めてキョロキョロしていると、街中に人影が見えないことに気づく。


「あれ?誰もいない?どうしてだろう」


 そうして見渡していると、一人で若い女の子が家並みから少しひらけた広場でうつむきながら佇んでいることに気がついた。

気になってゆっくり近づいて声をかけようとすると……


「え!?消えた!どういうこと?」


 確かに、目の前にいた少女が音もなく見えなくなっていたのだ。

 不思議に思ったトルテはもう一度見渡してみると、そこにはさっき見えた、誰もいない家並みがあった。


「そこの人、見えない顔ね。私になにか御用かしら?」


https://kakuyomu.jp/users/daikonz/news/822139842155624413


 ひんやりした声がして、

 トルテが驚いて、きょとんとしながら後ろを振り向くと、

 最初に見た透き通るような銀髪の青い目の少女が少し距離を取ってこちらを見ていた。

 そことなく儚く、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。


「宿屋ってどこかな?休める場所がほしいんだけど」


 トルテが少し静かに、ドキドキしながら聞くと……


「宿屋?そんなものはないわよ。」


 少女はそのまま表情を変えず、

 ばっさり会話を切るように即答されてしまった。


「えー!?そうなの!?」


 目をまんまるくしながらさっきの銀髪の少女が消えたときと、また違う驚きを感じて、思わず大きく叫んでしまった。


「声が大きいわよ……だって、ここは貧相な街ですから」


 銀髪の少女は貧相な街ということに対して、いつものことであれ悲しみを感じながら、

 少し寂しそうに目をつぶり微笑みながら答えた。


「どうして寂しそうな顔をしてるの?」


「あら、バレてしまったわね。だって、この街は貧しいこともあって民層が悪いんですもの」


 トルテが少女の様子を感覚で察知し、疑問を浮かべ声をかけた。

 少女は隠し事がバレた種明かしに、トルテにいつも思っていた不満に零した。


「人が一人も見えないのだって、私を邪魔だと思ってるのよ」


 強い口調で、少女はさっき見せた寂しそうな顔から一変して、鋭さを感じる少し腹を立てたような顔をした。


 少年は顎に手を当て真上を見て熟考しながら、一つの答えを導きだした。


「じゃあ一緒に旅にでようよ!」


「……は?」


 少女は頭に?を浮かべ、5秒ぐらいフリーズして、ようやくその言葉を理解した。

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