呪という字

いととふゆ

呪という字

 べらべらべらべらつまんない話をする奴のペースに巻き込まれるのが嫌。


 嫌だけど、私は相手の目を見て所々相槌を打つ。えー、とか、うわーとかも交えて。

 相槌を打ちながら、コイツ興味もねぇのにちゃんと聞いてるフリをしてやがんな、って相手に悟られてないかなって多少の不安を感じつつ。

 

 話聞いててもつまんないけど、相手からの、てめぇが喋んねぇからこっちが喋ってやってんだよっていう、顔には決して出さない上から目線な思いやりを感じるので、こちらも自然な感じを装いつつ必死に相槌をして相手に寄り添う感想を考えてます。


 だけど、実は、自分の話つまんなくないなかぁって不安になりながら喋っている人もいるのかな。


 べらべら話している人の心理はわからない。


 それは友人や職場の人との間に限ったことだと思っていた。

 なのに、数年ぶりに会った兄もその一味だったのだ。


 悲しかった。実の兄に嫌な感情が芽生えるなんて。

 実家にいるのに職場にいるみたいな気分だった。

 兄も結婚して家庭を持ったら、もう他人だ。職場のうざったい奴らと一緒だ。


 謝ってほしい。謝れ。妹を嫌な気分にさせたんだから。


 兄は私が帰った後、普通にショートメッセージを送ってきた。

 もちろん謝るためじゃなく。

 何とも思ってないのかな。妹の気持ちを。

 私は言葉を返すことなく、親指を立てた絵文字のみ押すことにとどめる。


 距離を置きたい。兄の調子に合わせてた義理の姉も嫌い。


 もう、気を遣って〇〇(義姉の名前)さんに会いたいな。△△(姪っ子の名前)ちゃんに会いたいな。なんてメッセージを送ることなんてしない。

 

 実際会いたいなんて思ってないんだから。

 

 しばらく普通に接していたけれど、小中学生のとき、痩せろって言われ続けてたこと忘れてないからな。


 長身痩身(今もだけど。それだけが彼のステイタス)の兄は周りからかっこ良いとちやほやされてたから、背が低く、太っていた私(今は標準体型)が許せなかったのだろう。


 今も太っていたら言われ続けてたのかな……。さすがにないよね、大人だし。

 

 あと私が小学生高学年の頃、腕を上げされて脇毛を確認されたことも一生忘れないからな。


 でも、まあなんだかんだ言って私の自慢だったお兄ちゃん。


 中学生のとき、同級生の目立つ男の子が、偶然、朝の通学時間に家から出てきた高校生の兄を見たようで、「お兄さんカッコ良いね!」って話しかけてくれたときは嬉しかった。


 あと機械関係に弱い私はパソコンやら携帯やら兄と一緒でなければ買えなかった。もちろん設定は兄にお任せ。


 優しいお兄さん。おせわになりました。

 

 私も結婚して優しくて頼れる夫を手に入れました。


 だから。


 私の夫にべらべらべらべらつまらない知識をひけらかして、あんたのペースに巻き込ませないで。


 私の入っていけない話(例えば野球)をして、私から夫を奪わないで。


 呪という字。口と兄。どちらも憎らしい。

 

 喋る兄に呪いを。


 昔、子供の頃に読んだ少女漫画に「呪殺は罪に問われないのよ!」というセリフがあった。

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