最初に申し上げますとですね、ぼくはミステリーを読むのが苦手なんです。
理由は明確で、読んで謎が解けたためしが殆どないからです。
文中に散りばめられた違和感に気づいてその正体を探るため前に戻って読み直し、ロジックを積み上げて確信を得て答え合わせのために先へと読み進める……そんな読み方ができない。
言うなれば、作中の探偵役や犯人役ではなく、彼らの行動と推理に「おおー」「えっ!?」「そんな!」と右往左往させられるその他の登場人物役に近い心理状態で読むことになるため、なんなら自分がアホになった気さえしてきます。
あれ?
このレビューを書くため自分のミステリー苦手な理由を言語化しているうちに何だか自分がミステリー読者として向いてるような気もしてきました。あれ?
まあ良いでしょう(笑)
たぶんぼくはですね、ミステリー作品中の「出来事」ではなく「人物」ばかりを追っているんでしょうね。
作者さんが丁寧に配置してくれた謎やヒントにはてんで気付かず、人のセリフや所作、表情ばかりを追っています。
その点、ミステリー作家さんからすれば、読ませ甲斐のない読者かもしれません。なんだか作者に申し訳ない、それもぼくがミステリーを苦手とする理由のひとつかもしれません。
その一方で。
ぼくが本格ミステリーである本作『探偵つむぎはだいたい寝ている』を好きな理由もまさにその「人」だったりもします。
ただただ愛しいんですよ。登場人物たちが。
探偵役のねぼすけつむぎちゃん。
助手兼狂言回しの啓ちゃん。
五月女先輩をはじめとする、常連の面々。
彼らが挑むのは殺人事件や重大犯罪ではなく、とある高校にて巻き起こる小さな事件です。
まずこれがいい。犯人も探偵も等身大なんです。異常者を理解しようと努めるのに払うコストが必要ないのです。
そうして愛しき登場人物たちと同じ目線で挑んだ事件の数々。
正直に告白しますとね、ぼくは謎解きを全部外しました。やっぱり向いてないや。
ですが、この清々しい読後感は何でしょう。
個人的な結果は二の次で、彼らと高校の朝の空気を、昼時の喧騒を、放課後の西日の眩しさを一緒に過ごせた楽しさだけが残っています。
このあたりが作者アオノソラ様の巧みさなんでしょうね。
ミステリーをお好きな方にはもちろんのこと、ぼくのようにミステリーが苦手な方にもぜひお勧めしたい作品です。
ぜひぜひご堪能ください!
面白いミステリの条件は、謎解き要素に加えて、魅力的なキャラクターと舞台設定、そして謎解き。本作は、そのすべてにおいて傑出したライトミステリです。
まず舞台は「学校」。誰もが経験している身近な場所にして、さまざまな個性の持ち主が集う社会の縮図が本作の舞台となっています。
そして学校で起こる事件の謎に挑むキャラクターは、「居眠り探偵」つむぎと、その幼馴染にして語り手(ワトソン役)の啓祐という学生コンビ。
本作は、各話本編が「問題編」と「解答編」に分かれており、読者が謎解きに参加することが可能な構成になっていますが、問題編のラストでは、名探偵・つむぎが謎解きのヒントを残して眠るという、個性的な演出があります。(背後から首筋に麻酔針を撃ち込まれて強制的に眠らされているわけではありませんので、どうぞご安心を)
そんな彼女たちが挑む謎も、ミステリファンならニヤリとする仕様。
アントニイ・バークリーの名作『毒入りチョコレート事件』を意識した第2話では、関係者がそれぞれの推理を披露しあって犯人を捜す展開をみせてくれます。
第3話は、探偵小説の金字塔シャーロック・ホームズ作品のうち、「暗号解読モノ」の代表作を意識した作品で、『踊らない人形』というタイトルがすべてを物語っています。読み終えた後、ああそういうことかと膝を打つこと間違いなしです。
手軽に読める学園ライトミステリ、ぜひお楽しみください!