行き先

ANZETT

第1話

小さい頃、まだわたしが3歳のとき、双子の片割れの弟と家出をした。

というのも、公園に行こうとしたのだ。

母は、掃除をしていた。毎日。祖母に言われるがまま、家事に追われてわたしたちに構う時間をつくってはくれなかった。

公園に行けば、誰かがいて、一緒に遊んでくれる。見守ってくれる人がいる。遊べる。うるさい掃除機の音もしない。

家に閉じ込められているような気持ちだった。

たくさん遊びたかった。構ってほしかった。母に。父に。祖母に。弟と。

その時のことは、よく覚えていない。

ただ、道を間違えて、偶然わたしたちを見つけた近所の人が保護してくれて、自分たちで歩いて家に帰ったらしい。

母は警察に連絡して、大事になっていたのだそう。

父はそれを笑い話として話してくれた。


そのくらい、逃げたくなることはある。

実際に逃げてしまえば、あとはどうにでもなる。

強い意志さえ持っていれば、どこへだって行ける。

いつだって行き先は、決まっていないのだ。

進んだ先に、行き先があるのだ。

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