VRと現実を行き来するサイバーパンクの世界。
現実を忘れるような美しき幽玄なVRとネオンと油で薄汚れた息が詰まるような現実、二つが折り重なる世界観の非常に魅力的です。読んでいるうちに世界の中にのめり込んで、ふうっと自分も仮想現実に入った気分になるほど緻密な描写でした。
主人公・リンは、VR世界に一人飛び込む強い女性であります。しかし、記憶喪失によって失った過去、機械の身体を通して得た感覚や感情が「本当」なのかどうか不安にも思う弱さのある一面もあり、葛藤し、それでも何かを「本当」のものを得ようともがいていて、VRと現実が入り混じる世界で、彼女が確かに泥臭く生きている人間であり、そんな主人公を応援したくなります。
そして、リンを護衛する無口なカイと幻のように現れて消える美しい白雲、二人の男とリンの三角関係も非常に魅力的でした。長年の相棒として側にいるカイと心惹かれてしまう白雲、三人の関係は失った過去のリンにも関係して――切なくも愛おしい謎が最後には明かされます。
現実を忘れて、幽玄な世界にどっぷり耽ることのできるSFファンタジーでした。
サイバーパンク中華・VR後宮潜入アクション!
ヒロインは、失った記憶を探し求めるリン。
ボディーガードに雇ったカイの献身的な護衛により死地をかいくぐりながら、九龍塞を支配する巨大企業・龍華(ロンホア)の秘密を探る――という物語です。
すでに義肢・義体となっているリンは、うなじのジャックでVRへ接続することができます。そのSF感がたまりませんが、VR世界の深奥へアクセスするパスコードはなんと漢詩! 古来の文化と未来感の融合が見事でした。
九龍塞を派手にブチ壊しながら、ダイブしたVR世界では後宮女官として歌会に出席し漢詩を紡ぐ――。
現実とバーチャルでの戦いは負ければそれぞれ、物理的な死、あるいは精神的な死をもたらします。全編にわたる緊張感がたまりません。
そしてリンの記憶の鍵になる人物の正体がまた切ない。バトルと三角関係の絶妙な配分も楽しめます。
電子楓橋――それはデジタルの波間に孤独をかこつ者の、過去の想いへの愁い。
人格も記憶もデータにすぎない。
すべては0と1に溶けていく。
それでも、あの人と生きた過去は真実だから――。
作中でくりかえし歌われる詩は、「相見時難別亦難」。
相見る時は難く、別るるも亦た難し。
会うのは難しく、また別れるのも難しい。
相まみえ情を通じた事実は他者からの干渉などで消せはしない。
尊厳を取り戻すため死力を尽くすヒロインと、彼女をめぐる二人の男たちの物語。ぜひご覧下さい!