第54話 【日誌】ルキアの記録2

王暦125年 10月25日



 この村は最悪だ。4年前より栄えてはいるが、ギルドの腐敗は凄まじい。ギルド長ギルベルト。こいつがすべての元凶だ。あいつを長から引きずりださねば、この村は異常事態から抜け出せない。私以外にも調査員のミレットと謎の仮面の人物が長の秘密に迫っているはずだ。しかし、ミレットはあてにならない。70点の回答しかできない少女だ。唯一の希望は仮面の人物だろうか。しかし、彼または彼女の居所は依然として不明。



 ギルベルトが長になった48年前――つまり、ダブルセブンの災厄以降、この村の歯車は狂いだした。災厄は、王歴77年の1月から始まった。尋常ではない寒さにより、王都では数千人が亡くなった。そして、夏は害虫により作物がほぼ全滅。アレがなければ、ギルベルトがギルド長になることもなかった。なぜ、奴は生きて「安らぎの洞窟」から戻ってこれたのか。なぜ、親友のロアーは死んだのか。ここを突き詰めれば、なんらかの糸口がつかめるはずだ。必ず、ギルベルトを法で裁いてみせる。それが、犠牲になった村民たちへのせめてもの救いだろう。



文責:王都 歴史編纂部 ルキア



【研究員のメモ】

ルキアの言う「ダブルセブンの災厄」は、こちらの世界で言う「1977年の異常気象」と重なる。世界が悲鳴をあげている時に、奴らはやってくる。



【研究員のメモ:追記】

学生が私の背中に、ルキアの報告書をホッチキスで直接打ち付けてきた。

「先生、これが『文責』ですよ。痛くないでしょう? 安らぎの村の住人になるんですから」

血は出ない。代わりに、透明な青い粘液が流れ出し、床に「77」という数字を描いている。私は、ルキアが裁こうとしている「悪」の一部になりつつある。

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