第9話 助かった……!!
ミミックはホリィと名乗った。ホリィは羽衣とやらの使い方を私に説明した。確かに強力な品だ。特に、ホリィが一押しと言って説明した方法はかなり。
それは、羽衣を身にまとうと、魔法を使えるようになることだった。羽衣をまとう、といっても、ただ羽衣をひらひら体にまとわりつかせればいいというのではない。ホリィがご丁寧にイメージ画像を私の頭の中に送りつけてきたが、それは、前世で見たアニメに出てきた魔法少女の変身シーンだった。
いや、本当に。
羽衣が変化してとある衣装になるのだが、これがもう、アニメに出てきていた超常の力を使って戦う美少女たちが着ていたコスチュームみたいなデザインなのだ。
いや、私もうハイティーンだよ?あんな格好が無条件で似合うっていったらローティーンまでというのが、私の持論なのだが。
とはいえ、変身しないと力が使えないというわけではなく、そのままの姿で羽衣に魔素を流しても、魔法を使ったのと似たような効果が得られるらしい。
「何愚図愚図してるのよ。この空間は時間の流れが遅いけど、だからって向こうの時間が止まっているわけじゃないんだからね!」
「あー、今更なんだけど、ここって何?」
「カミサマが人間と会うために使う空間よ」
「へー、初耳。カミサマって人形を介して会うもんだと思ってた」
「こういう方法もあるってこと」
私は心を決め、カミサマを振り返った。依代に使われていた人形が壊れかかっていて、私はぎょっとした。
何、神威を使ったでな。この空間でも耐えられなんだ。
「あの、ありがとうございました。助かりました」
まだ終わってはおらん。礼を言うのは早いぞ。
ラヴィが、クルル…と鳴いた。カミサマが小さく頷く。
よし、わかった。お前の良きようにしてやろう。
私は不安になってラヴィとカミサマを見た。ホリィは私の頭に軽く頭突きをしてきた。
「ほら、さっさと行くわよ」
「いや、行くってどうやって」
「その羽衣に魔素を纏わせて、出口を念じながら空間を一撫ですれば、出口は開くわ」
「わかった。ラヴィ?」
私はラヴィに声を掛けた。が、ラヴィはカミサマの傍から動かない。
「あの子はここに残るのよ」
ホリィが言った。
「やることがあるの。カミサマにお願いしたのよ。今、言ってたでしょ?」
「いや、私、あの子の言うことわからないんだけど」
「あ、あんたってそうなんだ。まあ、そういうことだから、心配しなくて大丈夫。そのうちまた会えるわよ」
私はラヴィを見つめた。ラヴィは何度も瞬きをしながら私を見ていた。
見つめ合っていても埒があかない。私はそう思い、ホリィが言ったとおりに魔素を羽衣に纏わせ、振るった。
途端に、黄緑色の空間の中に、青空が見えた。気は進まなかったが、あの先でマリちゃんがトラブルに巻き込まれているかもしれないと思うと、行くしかなかった。
待て、行く前にもう一つ、餞別を持たせてやろう。
カミサマが言った。そして、カミサマはあるモノを私に放って寄越した。
私はそれを服のポケットに突っ込むと、青空に向かって飛び込んだ。
と、私は一瞬にしてあの森の上に出ていた。体が普通に地面に向かって落ちていく。ホリィの金切り声が響いた。
「ちょっと、何落ちてるのよ!羽衣を使いなさいよ!魔素を纏わせるの!」
私はすぐに魔素を羽衣に流した。と、羽衣がふよふよと浮き、それを纏っている私も空中に浮かんだ。
さて、どうするか。
魔法による攻撃の結果、人間が直接的に怪我をし、それがある一定の基準を越えたと世界が判断すれば確実に煉獄が発動する。が、魔法や魔素術で防ぎきった場合には、どうも煉獄が発動しないようなのだ。六年前、あの男に襲撃されたときもそうだった。最終的に亀の甲羅ごと吹き飛ばされた私が怪我をし、それでようやく煉獄が起動した。
あー、嫌だなあ。今回も怪我しないといけないのかなあ。
心の中で愚痴ったとき、ホリィがまたしてもけたたましく言った。
「何のために事告げ様が餞別を持たせてくれたと思ってるの」
「え」
「あれに魔法が当たれば、人間に魔法が当たったのと同じ判定になるわよ」
理屈はわからなかった。が、ホリィの言う通りにしてみようと私は思った。
相変わらず空に制止したままの黒衣の男に向けて、私は魔素の小さな塊を差し向けた。羽衣を使って打ち出すようにしたので、かなりの速度が出ていた。うまく狙えなかったが男の頬をかすることは出来、相手の注意を十分に引きつけることができた。
男がこちらを見た。前も思ったのだけど、相変わらず人形めいた整った顔だった。そういうのが無表情でこちらを殺しに来ているのが怖い。
男がこちらに手を向けた。さっきまでは感じられなかった力のうねりを、羽衣を通じて感じた。
男が力を放つ。それは光となってこちらに向かった。が、私はそれよりも先に、カミサマからいただいた物を男に向かって投げていた。それは男が放った光とぶつかると、閃光とともに爆発した。
それまで無表情だった男の表情が動いた。驚愕、というのが相応しい表情だったかもしれない。そのときの彼は、私と似たような年齢の少年に見えた。
次の瞬間、空間そのものが揺れた。来た、と私は思った。
男の背後の空間が突然暗くなる。その闇は光を吸い込むように暗くなり、その中心から白い手が、手首から先だけにゅっと出てきて、男をその両の手のひらで挟み込むようにして手のひらを合わせると、消えた。
青空が戻った。
今のが、世界に仕込まれた仕掛け。禁を犯した魔法使いをああやって世界が回収していく。言い伝えでは、あのようにして捕らわれた魔法使いは、神の煉獄で保管され、心を改めさせられて、世界に終末がきたときに神の兵として蘇るのだという。
何にせよ、私たちは助かったのだ……!!
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