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何度目か分からない宣言。私はアリス狂である。そりゃもう小瓶に入ったアリスを連れ歩きたいぐらいにはアリス狂である。そのせいかアリスグッズ直々に逃げられるぐらいには。
が、だからこそ困る事もある。グッズを集めるだけ集めて使わない。なんて事もある。特に今困っているのは、買い集めた見かけは可愛い、値段は可愛くないクリームである。
アリスが小瓶持ってる場面、アリスがチェシャ猫と会ってる場面、帽子屋達とのお茶会をしている場面、アリスがトランプに襲われている場面、等々それぞれ違う場面が映されたもの。
可愛さのあまり机の中に監禁されていたのだが、久々に開けて眺めようとしたら、まず匂いがキツい。強烈に香る、柑橘系の甘い匂い。ふわっとならば酔いしれるのだが、その域を超える。
第一に、これを販売している外国の老舗アロマブランドは何一つ悪くない。私が、少量づつ使う事をせず、机という密閉した世界に閉じ込め、匂いを充満させた結果がこれである。
……鼻づまりのHSPって匂いどうなんだろ……。いや、アロマの効果なめすぎな。物は使い方を間違えると暴走する一例な。
なんて大真面目に考えていたのだが、段々と面倒臭くなり、さっさと風呂に入る事にした。風呂に入っても考えてしまうのは、あの可愛らしくも強烈な芳香を放つクリーム達であった。
中身だけぼっこり抜き取って連れ歩きたい。けれどもそれにはケースがいる。あの可愛すぎるケースを持ち歩いたら傷が着く。多分傷を見つけた途端その場で発狂する。お気に入りだから尚のことである。はてさてどうするか。
そう考えていたら、ふと未だ持ち得ない柄が存在した事を思い出した。そう言えばラッパ吹きの白兎は持っていなかった。
私の卓上は不思議の国のアリスの時計うさぎ塗れであり、『もうお前はいいよ……。アリス買ってんのか白兎買ってんのか、分かんねぇよ』という心理状態である。とどのつまり、白兎への執着は一段落落ち着いている。
アレを持ち歩いたのなら、そこまで激しく痛みは無いのではなかろうか。そもそも顔面の乾燥に日々悩まされ、さり気なく保湿剤をベタ塗りしている人種なのだから!! ならば懐に強烈なダメージが与えられるだけで、問題はない!! 次買いに行こう。
そう思ってニヤニヤしながらの風呂上がり、自分の部屋に戻ってまずはクリームを確認。つまり形状が同じなのか確認した。見た感じ、滅茶苦茶お茶会の場面以外は取り外して使えそう。
じゃあ!! と思った矢先、懸念事項が一つ出てきた。端の方に『リップandネイル』の文字。物凄く嫌な予感がする。といえのも、態々『リップandネイル』などと書かれているものは顔面への使用は推奨されないことがある。
……私は恐る恐るリビングへと戻り、AIに聞いてみる事にした。『○ンドレア ○ーランドのリップandネイルクリームって、顔面使える?』と。
「……おい、干し柿見てぇな顔するな」
近くから瑠衣の声が聞こえてくる。神はいない様だ。
「ねぇ!! 瑠衣たんっ!! 冬場の乾燥気にならない!? 鏡花直々に塗ってあげるよ!!」
「裏がありそうだから断る」
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