文芸部員は青春ごっこがしたいようです!?陰キャ女子校生の日常はどきどきがいっぱい😍

@punipuni_0123

第1話

「突然だが、君」


放課後の廊下で呼び止められて、私は足を止めた。

振り返ると、見知らぬ先輩が立っている。胸元には、小さく色あせた文芸部の名札が付いていた。


「文芸部に入らないかい?」


唐突すぎて、言葉が一拍遅れる。


「え、えぇと……?」


先輩は少しだけ姿勢を正し、困ったように、けれどどこか切羽詰まった声で続けた。


「部員が足りなくてな……三人必要なんだが……あと一人、どうしても足りないんだ」


その言い方が、妙に必死で。

私は一瞬、断る理由を探そうとして…やめた。


「……いや、別にいいですよ? 入っても」


言ってから、自分でも少し驚いた。


「……まぁ、無理にとは言わない……無理なら他に声をかけ…」


途中で言葉が止まる。

先輩は、一瞬、固まったまま動かなくなる。


「……ん? 今、なんと?」


「入っても良いですよ……?」


私は視線を逸らしながら、付け足した。


「別に、他に入りたい部活もないし……」


数秒の沈黙。

廊下を吹き抜ける風の音だけが聞こえる。

次の瞬間、先輩の表情が、嘘みたいに崩れた。


「……救世主か!? 君は!!?」


「えっ」


「ぜひ、頼むっっ!!

今日から君は……部員第1号だっっ!!」


勢いよく距離を詰められ、思わず一歩、後ずさる。


「……大袈裟だなぁ……」


そう言いながら、胸の奥が、わずかにざわついているのを感じていた。


理由は分からない。

ただ、何かが動き出したような感覚だけがあった。


この日が、自分の人生に、静かだけれど確かな風を吹き込む入口だったことを…そのときの私は、まだ、知らなかった。

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