他言無用でお願いします
瀬滝二会
伏線(1/3)「気になる・・・。」
ただ安定した給料と福利厚生、あと家から通いやすい立地であればいい。そのためだけに、上辺(うわべ)だけの志望動機を並べて、何件かの企業に自分を売ってきた。
しかし、資格を持っていても、どこも仲間に入れてくれない。質問されたことを的確に答えられている自覚はあるのに。
今日で、6社目だろうか。テレビニュースを観ると、現在の就職内定率は、過去最高といわれていた。友達も、1社目で内定を貰ったと言っていた。
3月から就職活動を始めて、今日で10月、もはや、諦めている。乗っている電車は揺れているが、僕の心は、揺れず、落ち着いていた。
もう駄目でもいいや。僕は、深々と席に座って、娯楽系の本を読んでいた。
最初は、都市伝説の本。特に、別班や世界を操っている秘密結社の存在は、興味深い。この本は、実在する書物や出来事をもとに紐解いていくので、非常に没入感があって面白い。
乗り換えた後は、アクション漫画。世界を救うために奮闘する諜報員の物語だ。作品のメインは、巨大ロボットや罠だらけの殺人屋敷に立ち向かう迫力あるアクションと裏切り者探し。これは、わくわくが止まらない。
趣味の話はさておき、僕は、目的地の駅に下車し、改札を出た。
駅から徒歩10分くらい。程よく遠いが、いつもの駅から学校へ行く距離と同じくらいだ。学校よりは、道が平坦で歩きやすい。
少し早く来てしまった。でも、10分前行動とも言うし、いいだろう。僕は、そう思い、今日受ける会社に向かった。
「こちらの部屋で、お待ちください。」
従業員60名ほどの小さい会社なため、マンションの一室にあるリビングほどの小部屋に、一人、待たされた。従業員が部屋を出る前、僕は、引き留めた。
「すみませんが、お手洗い、お借りしてよろしいでしょうか。」
「あ、どうぞ。」
緊張はしていないが、念のため、行っておく。用を足した後、手を洗っていると、鏡の隣に貼られている紙が目に入った。
総務部の皆様へ
溜まった時、ゴミ出しをお願いします。
しかし、ゴミ箱を見てみると、溢れんばかりに、手拭き用のティッシュが溜まっていた。社会に出ていない立場で言うのもなんだが、「お客さんも見る部分」をちゃんとしないのは、どうかと思う。まぁ、中小企業とは、こんなものなのかな。
待機部屋に戻ると、先ほど、案内していただいた従業員の方が立っていた。メガネをした20代後半って感じの人だ。見た目から、心の中で、分かりやすくオタクさんと呼ぶ。
「よろしければ、こちらもどうぞ。」
「ありがとうございます。」
オタクさんから、400ml入ったペットボトルの緑茶を貰った。
今は、バッグの中に、飲みかけのミネラルウォーターが入っている。そのため、オタクさんが部屋を出た後、緑茶もしまうことにした。
しまう時、僕は、蓋部分にある違和感を覚えた。
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