コミック書評:『ドリンコ!』(1000夜連続33夜目)
sue1000
『ドリンコ!』
――食事は1日3回。飲み物は…無限大!
グルメマンガの歴史を振り返れば「全料理ジャンルを網羅」した作品には枚挙に暇がない。本作『ドリンコ!』は、その系譜にありながらも「飲み物全般」というありそうでなかった視点を打ち立てた点で、稀有な存在感を放つ。タイトルが「ドリンク+コミック」を意味する造語であることからして、すでに遊び心と宣言性が詰まっている。
主人公は、飲み物グルメ、通称「飲ルメ」を自称するの川瀬ひかり。出版社の編集部に勤めながら、空いた時間はひたすら飲料探索に費やす。アルコールからカフェドリンク、乳酸菌飲料、さらには地域限定のソーダやコンビニの期間限定ラテまで、ありとあらゆる液体が彼女の好奇心の対象となる。単に飲むだけでなく、その背景や文化を辿る姿勢が作品に奥行きを与えている。
第一話では、湧き水を汲みに群馬の山奥へと足を運ぶひかりの姿が描かれる。清冽な水を口にした瞬間の彼女のモノローグ──「食事は一日三回。でも水は、一日に何度も口にする。だったら、これは世界一身近な贅沢だ」──は、作品全体を貫くテーマを端的に示している。つまり「飲み物は生活の中に無限に存在する喜び」なのだ。
また、彼女を取り巻く人々も物語を彩る。大学時代の友人でバリスタをしている沢渡真吾、居酒屋を切り盛りする幼なじみの早乙女葵、そしてひかりが密かに憧れるワインショップの店主・日下部玲央。それぞれが得意分野のドリンクを通じて彼女の探究心を刺激し、ときに競い合い、ときに協力しあう。飲み物をめぐる小さな人間ドラマが積み重なっていく。
『ドリンコ!』の面白さは、決して蘊蓄の羅列では終わらない点にある。例えば、真夏の祭りで売られるレモネード一杯を、どのように「文化」として捉えるか。あるいは、インスタントコーヒーの「簡便さ」がなぜ時代の象徴となりえたのか。読者は、日常にありふれた液体を通して社会の変遷や価値観の揺らぎを覗き込むことになる。ひかりが「飲み物は時代の鏡」と口にする場面は、決して誇張ではない。
加えて、本作は絵柄のトーンも魅力的だ。炭酸が弾ける瞬間を擬音ときらめく線で表現したり、ワインの色調がコマの背景に広がったりと、液体の質感を視覚化する工夫が随所に凝らされている。読んでいるうちに実際に喉が渇いてしまうのは、このマンガならではの副作用だろう。
食のマンガが「胃袋の満足」を追求するなら、『ドリンコ!』は「喉の渇き」と「心の潤い」を追い求める作品だ。飲み物は人間の営みに寄り添うもっとも根源的な文化であることを、本作は繰り返し読者に思い出させる。食事が「三食」なら、飲み物は「無限」。その無限の可能性を、ひかりとともに追いかける楽しさが、この一冊には詰まっている。
新しいジャンルを切り拓く冒険心と、日常の何気ない一口に潜む豊穣な物語性。『ドリンコ!』は、グルメマンガ史に新しいページを加えるに違いない。
というマンガが存在するテイで書評を書いてみた。
コミック書評:『ドリンコ!』(1000夜連続33夜目) sue1000 @sue1000
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます