県内最凶の不良校に入学する俺、ステータス( メスガキ )が見えるようになった件
クスノキ
1: ステータスがうざい件
中学を卒業して高校入学一ヶ月前という日に
俺、鳴海颯太はベットに座り頭を抱えていた。
風邪せいで受験が受けられず、志望校を受ける事が出来ず、県内最凶の不良校と言われる青嶺高校に行く事になってしまったからだ。
「どうしよう……」
ごく普通の高校生である俺が、不良達に絡まれて耐えられるはずがない。
今までまともに喧嘩した事も無いのに無理に決まっている。
「俺、これからどうなるんだよ……」
不安で体が縮こまる。手のひらが汗でじっとりと湿っていた。
パシリにされたり、果てはサンドバッグにされる未来が簡単に想像出来た。
不良達に、俺のこれからの日常を支配される事になるだろう
――その時、視界に微かな光と共に青白い画面のような物が現れた。
「ん?」
画面には文字が整然と並んでいる。
━━━━━━━━━━━━━━━
・名前 : 鳴海 颯太
・年齢: 15歳
・筋力: 11 /100 ( ひ弱だね (笑))
・持久力: 10/100 ( 体力なさスギィ〜大丈夫?)
・スピード: 8/100 ( おっそ……亀さんかな? )
・技術力: 5/100 ( そんなんで天下取れるの? )
・カリスマ: 4/100 (子供にも舐められるよ (笑))
・精神力: 25/100 ( メンタルだけ高くて草 )
・運: 3/100 ( 運悪〜いずっと家に居れば? )
・ポイント: 5 (特別にあ・げ・る♡)
┗ステータス上がれてスキルもゲット出来る。
※仕方なくなんだからね!勘違いしないでよね!
━━━━━━━━━━━━━━━
「なんだこれは……」
ステータスが表示されている事自体も意味が分からないが、れ以上に目につくのは――各数値の横に並ぶ、やたらと腹立つコメントだった。
「ひ弱だね (笑) じゃねぇよ!!」
思わず画面に向かって叫んでしまう。
誰だよ……人の心を抉るようなコメント書いてる奴は。
「体力無いことは知ってるんだよ!それにスピードに関しては亀さんかな?だと……殺す!」
本当に、今すぐこの画面を殴りたい衝動に駆られるが、殴ったところでどうなるわけでも無さそうだったので心を落ち着かせる為に、深呼吸をする。
「ふぅー、本当に誰なんだこのコメント書き込んでる奴は……」
自分でも貧弱なのは理解していたが数値にされるとここまでだとは思わなかった。
平均値は分からないが、コメントを見る限り低い可能性の方が高いだろう。
メスガキみたいなコメントのせいでステータスを驚く暇すら無かった。
このコメントを書いた奴がステータスをくれたと考えた方が自然だ。
「……おい」
試しに、画面に向かって声をかけてみる。
「聞こえてるなら出てこい。面と向かって言いたい事がある」
すると、まるで待ってましたと言わんばかりに、画面が光り、表示された。
――ピコン。
【は?何?ひ弱くんが私に何か用があるわけ?】
また人を煽るようなコメントが書かれていた。
「やっぱりいやがったなぁ……」
思わずベッドから立ち上がり画面を睨む。
このコメントで確信した。中身は性格が捻じ曲がっていやがるメスガキだ。
「ステータスをくれたのも、いちいち煽りコメント付けてるのも、お前だろ!」
【事実書いてるだけなんだけど? (笑) 優しさって知ってる? 現実を教えてあげるのが一番優しいんだよ♡ ざぁーこざぁーこ♡】
画面いっぱいに広がる文字を見た瞬間、自分の
こめかみがピクピクしているのが分かる。
あまり人を殴った事ないが、目の前にこいつがいたら、間違いなく一発入れている。
入れて――返り討ちに遭う未来まで、はっきり
想像出来るのが悲しい所だ。
「普通に喋れないのか……性格終わってるぞ」
少しでも仕返ししようと頑張って返すが――
【今更気づいたの? 君のステータス並みに察しが悪いね】
「くっ……!」
相手に通じず、簡単に言い返されてしまう。
仕方ないと思う。まともに友達もいた事ない俺は喧嘩や口喧嘩もする機会が無かった悲しき人生だったから。
自分で過去を思い出し悲しくなってきてしまった。
「……で? 結局お前は何なんだ。俺にこれをくれて、何が目的なんだ」
このままやっても口喧嘩で勝てるわけが無いので、気を取り戻して本来聞こうとしていた事をメスガキに聞く。
しばらく沈黙が流れた。
さっきまで好き放題煽っていたくせに、今度は
画面がやけに静かだ。
「どうしたんだ? だんまりか?」
そう言った瞬間、画面からゆっくりと文字が浮かび上がる。
【目的?――それは秘密】
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
急にステータスなんて物渡されたと思ったら目的は秘密と言われてはい、そうですかってなる訳がない。
「秘密って、そんなんで納得できるか」
【別に納得しなくてもいいよ。でも、ステータスがあれば、よわよわな君でも強くなれるよ♡そして青嶺高校の天下取れちゃうかも?】
「……強くなれる?」
【そうだよ? ステータスのポイントを消費して上げれば筋力とか上がってよわよわな君でも強くなれるんだよ?感謝してくれてもいいからね?】
画面に書かれている文字を読んで初めて気づいた
(そうか――ステータスが見えるって事は上げれるって事か!)
確かに鍛える事が出来るのであれば青嶺高校を
何とか生き残れるかもしれない。
俺は画面をもう一度、まじまじと見つめた。
最下段に表示されている数字。
・ポイント: 5
その数字が、やけに存在感を放っていた。
「でも……そんな簡単に強くなれるわけがない」
【はぁー。せっかく善意で言ってあげたのに、
やれやれ。試してみればいいだけなのに……頭わるーい♡】
「試す?」
俺は、ぽつりと呟いた。
【そうそう。口で疑う前に行動しなよ、ひ弱くん】
「ぐっ……!」
イラつくが反論する事が出来なくて口を噤む。
このメスガキの言う事は正論だったからだ。
何言っても言い返される気がしたので、ポイントを試して見ることにした。
━━━━━━━━━━━━━━━
【ステータスを選択してください】
・筋力
・持久力
・スピード
・技術力
・カリスマ
・精神力
・運
━━━━━━━━━━━━━━━
(本当に上げれるとしたらどれを上げるべきか)
分かりやすく筋力か。
逃げたり出来るようにスピードか。
殴られてもある程度耐えられるよう持久力か。
……考えたが、すぐに決まった。
「筋力だな……」
弱そうな奴は、真っ先に狙われる。
逃げても意味が無いし、耐えられてもやられぱなしだと意味が無い。
だったら先に筋力を鍛えた方がいい。
筋力に1ポイントを振るとすぐに変わった。
――ピコン。
━━━━━━━━━━━━━━━
【筋力 +1】
【ポイント消費:1】
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その瞬間。
「――っ!?」
腕の内側が、じわりと熱くなった。
血が一気に巡るような、重くて確かな感覚。
思わず、拳を握る。
「……?」
筋力を上げたが、1だけだからか、余り筋力が付いた実感がない。
画面に筋力が上がり、そしてポイントは減っている。
「上がったのか……?」
【一くらいでそこまで変わる訳ないじゃん (笑)】
「まあ、だよな」
自分でも、そう思った。
ゲームでも能力値が1上がっただけでそこまで変わらない。
(流石に1ポイントは誤差か)
腕を見ても、見た目は何も変わっていない。
筋肉が盛り上がったわけでも、力こぶが出来たわけでもない。
まあ、でも……
今の俺は、青嶺高校に放り込まれる未来を前にして、ただ怯えているだけの存在。
このまま何もしなければ――結果は、ほぼ決まっている。
「入学迄に鍛えた方がいいな……」
このままでは虐められるだけだが、鍛え強くなって怯えなくても良いように。
【その意気だよ、ひ弱くん♡】
このコメントはいちいち煽らないと居られないのか。若干呆れた顔で画面を見つめる。
「でも、ありがとな。目的は分からないが、未来に少し希望を持てたよ」
目的などは秘密と言われ分からないが、未来に怯えるしか無かったのに、今はこの能力のおかげで希望を持てた。
【は、はあ!?ふ、ふん。別にあんたの為じゃあないし!】
「じゃあ誰の為だよ……」
急にツンデレみたいな事を言い出したコメントに苦笑いをした。
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