理系ギャグの小日向ひなたさんが、こんな本格SFを書いていたとはというのが正直な驚きです。
西暦2100年、CO2が寒冷化ガスとなった逆転の世界。焚き火はテロ、人間の体温は革命の火種。GCA最強の執行者「ゼロ・スリー」が廃墟で震える少女「フロスト」の36.5℃に触れ、論理を捨てて世界を裏切るこの出発点の鮮やかさが物語全体を牽引しています。
「氷の反逆」から「炎の継承」へと章を重ねながら、32話・9万字で連載中。アクション描写の映像的な切れ味と、CO2の意味を反転させた世界観の論理的整合性が、多くのレビュアーを唸らせています。
オーバースペック先生の別の顔が、ここにあります。
温度と数字が特別な意味を持つ本作で、序盤から出てくるCO2排出をテロとみなす組織。
ただ論法や動きがどうもまっとうすぎて怪しい……
様々な憶測を転がしながら読み進めることで目にする、刺激的な場面の連続。
動きのある場面描写は、巧みな映像作品のカメラワークを思わせるほどゾクゾクと胸に迫るものがあります。
そんな寒々しい世界にも温もりを感じ取れるのは、登場人物の心にある熱を拾い上げているからこそ。
人間の欲をあぶり出すアイロニーと、論理的整合性の取れた構成には拍手を送りたくなりました。
現代に問いかける未来からの示唆。
まさにSFの醍醐味とも言える魅力がぎゅうぎゅうに詰め込まれてあり、テクノロジーへの好奇心だけでは済まないほどイマジネーションを刺激してきます。
個人的にはルビの振り方にセンスの良さを感じ、そのセンスゆえにこの圧倒的世界観なのだなと妙に得心しました。
おもしろければ他に何もいらないーー
そう思わせてくれる強烈な説得力を持つストーリーがこの中にあります。
映像で観ても素敵だと思いますが、文章の鋭さこそ魅力だと感じる秀作です。