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化粧をしていて、それを実感出来るのは、やはり目元である。アイシャドウを塗っていると、塗り終わると漸く化粧をしたと実感出来る。

ただまぁ目の周りが色付くと、どうしても気になるのが睫毛である。瞼にばかり目がいって、目本体に意識が向かない。故に考える事凡そ三秒。ある一つの決心をした。


家に帰ってきて戦利品を確認する。まつ毛美容液、透明マスカラ、リムーバー。そう何をしたいかと言えば、まつ毛持ち上げれば何かしら世界が変わるのではないかと言う個人的疑問である。

私の外見の数少ない自慢であるが、そう大いなる自慢だが、睫毛が長い。測って伸ばしたら8mmあった。なんなら目尻は上まつ毛と下まつ毛がキスしている。良いだろ?

が、上まつ毛は下に、下まつ毛は上に向かって伸びている為、まぁーパッとしない。睫毛ないんじゃないかってぐらい存在感がない。何なら3分の2の視界をまつ毛が覆っている。そして眼科に行って、気球を見る検査をすると、『千房さん、ちょっと瞼を指で上げて戴いて。まつ毛入ってるんで、取れないんですよ』と言われる始末である。

大いなる私の自慢話である。

だがまぁ、そんな世界とはおさらばである!! マスカラ買ったから!! まつ毛上向き強制固定だから!! 負担もそれなりに掛かるらしいが、週一、大型連休しか使わないから、重くない!!

と言う訳で、もう出掛ける事は無いくせに。まつ毛上げたところでなんの成果も無いくせに、嬉々として洗面台に立って、ちょんちょんっと塗ってみた。


帰って来て鏡花はまずもって洗面台に行き、手洗いうがいと化粧落と風呂を済ませる。今日もそうだろうと、思ったいたら、遠くからバタバタと足音が聞こえてきた。顔を見てみると不貞腐れている。取り敢えず鏡花は近くにスマホを手に取ると、何かをカタカタと打ち始めた。

「瑠衣たん」

なんだ?

「鏡花の爆長まつ毛、上がってる?」

癪に障るが鏡花のまつ毛は長い。憂いを帯びた顔に良く似合う枝垂れまつ毛である。そして其れは今も変わらない。目を覆うような蝶の羽のように揺らめくまつ毛は下を向いている。

「枝垂れてる」

「くそっ。やっぱビューラー必要か。マスカラだけでは重力に逆らえねぇ」

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