西さんは行く

荒俣 新

第1話

私は、西江 郁 40代のおにいさんだ。私は、マジックもできる熱狂的ゴジラファンだ。その私が、ある日、仕事で東京にいた。そのついでに、トー横のゴジラへ参拝しに行った。

 崇高な気持ちでゴジラを眺めていたら、私の信仰心を引き裂く事件がおきた。

 なんと、くそ超短いミニスカをはいたギャルが、急に

 「おじさん、私、買ってくれる?」

 と、私に声をかけてきたのだ。

 ゴジラに夢中だった私を残念な気持ちをした彼女に、私は、

 「えっ、飼うの。う~ん、とっても欲しいけど、うちの家では、とても飼

 えないわ。」

 「それに、おじさんではく、私は、お・に・い・さ・ん。」

 と、どや顔でかえす。(ふつうは、これで退散できたでしょ。)

 ギャルは私に言葉に反応しきれない状態だったが、なぜかまだ絡もうとす

 る。

 「じゃ、おにいさん~。ゴジラじゃなくて、私を買って!」

 (こいつ、ゴジラのことを見抜きよったな。しつこいなぁ。仕方ない。奥

 の手だ、こらっ)

  私は、ぼそっと、つぶやく。

 「淫行」

  ギャルは不思議そうに顔を傾ける。

  すると、急に私が左手を上げ、

 「セキセイ」と叫ぶ。そして、咳をすると、

  なぜか、左手から、飛び出てきた鳥が、続けて

 『インコー。インコー』と鳴く。

  茫然として、フリーズしたギャルを放置して、そのまま、西は新宿駅方 

  面へと悠然と歩き出す。左肩の上に、セキセイインコを乗せて。

   歩きながら、西は、にこやかにつぶやく。

 「今日は、ついてる。ゴジラも参拝したし、娘にも自慢できるし」

  思わず笑いもでる。

 「ふっふっふっ。ネッ!インちゃん」

  『サイコー、サイコー』

  しばらくフリーズしていたギャルが咳込んだ後に、なぜか急に、真面目

  な顔をして、

  「真面目な大人になろ。」とつぶやいた。

  これが彼女の人生の大きな転換点になるとは、世の中不思議なものであ

  る。


  西さんとインちゃんの幸せな一日であった。

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西さんは行く 荒俣 新 @Aramata-17

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